参加体験記

講座仙台学2026 仙台に関する講座「伊達家治家記録」の史料性について~編纂資料の信憑性を考える~

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日時 2026年1月24日(土)10:30~12:00
講師 渡邊洋一氏(東北文化学園大学特任教授)
場所 仙台市市民活動サポートセンター6F セミナーホール
主催 東北文化学園大学地域連携センター

 書誌学を専門とする講師が伊達家治家記録について論じた講演です。書誌学とは、スマホで検索すると、書物(文献)を研究分野とし、その成立から伝来、内容、形態、製造過程(印刷・製本技術など)に至るまでを科学的・歴史的に探求する学問。文献学、歴史学、文学研究の基礎を支える重要な分野だそうです。主題に史料性、副題には信憑性の用語が使われており、書誌学の見地からと頷けます。
 本文10頁、史料集9頁、資料集7頁と多めの講演資料です。書誌学の予備知識として、史料と資料、史(資)料の種類、史料の性格(価値)、歴史書とは、歴史書のスタイル、正史とは、東アジア圏の歴史、日本の正史という8項目に関する解説から始まります。これにより史料と資料の違いや歴史史料の見方等について多くのことが理解できました。シリョウの発音だけでは聞き手が史料と資料を聞き分けられないので、スケシリョウ(資)、フビトシリョウ(史)と言葉を足して分かるように説明するのだそうです。
 本題の「伊達家治家記録」に入ります。まず、「伊達家治家記録」というものはなく、輝宗・政宗以降の伊達家当主の院号を入れたもの、例えば「貞山公治家記録」などはあると言います。各当主の治家記録の類書が伊達家治家記録です。輝宗・政宗から明治維新時の慶邦までの伊達家当主14代の治家記録が作成されています。歴史書ですが、為政者が自らの治世を担う正当性を示すための政治的な意図を有するものです。
 4代綱村の指示で作成が始まり、編纂は3期に分けられるそうです。1期は輝宗から3代藩主綱宗まで、2期は4~6代藩主、3期は明治維新の廃藩置県後に7代~12代藩主まで、13代慶邦は事蹟であり、各々編纂方針は違っています。
 伊達家治家記録は編纂時期により内容に相違があり、為政者側の立場に立った歴史の記述も見られるものの、藩政時代の仙台の歴史を考える上で最も基本的な史料であり、藩史としても全国的に高評価が得られるといいます。藩の正史としては福岡黒田藩の黒田家譜、会津松平家の会津藩家世實記などがありますが、江戸時代を通じて継続した藩がそれ程あるわけでもないので藩の正史は貴重だそうです。
 最後に特論として2つの事例を示して、編纂時の抜け落ちや都合の悪いことにはバイアスがかかるなど史料としては限界があるとします。利用する際には多角的に見ていく必要があるほか、歴史事実に対して発生した背景や事情を考えることが大切であり、「何故」「どうして」を解明することが最も歴史学にとっては重要であるとしています。
 充実した講演資料を教材に、書誌学を知り、伊達家治家記録を知る1時間30分の講演でした。後世に残された歴史史料、資料などから当時の歴史的事実を推測していくことは面白さがある反面、新資料の出現によって内容が変わりうることもあるそうです。数十年前の学生時代に習った歴史も現在では内容が様変わりしている事例も散見され、歴史的事実の変化に驚くこともあります。小説家の描く歴史小説も学術的に裏付けられた部分に著者の仮説や創造等を加えて作品を書き上げているのだろうと思います。その過程が作家の醍醐味なのかも知れません。
 デジタル社会が急速に進展拡大していく中で、「デジタルデータは歴史史料になりうるか」と手元のパソコンでAIに回答を求めてみました。デジタル技術を活用して新しい歴史学を築く分野としてデジタル・ヒストリーが台頭しているそうです。デジタル技術は歴史研究に多角的なアプローチをもたらすとし、多様な史料のデジタル化、アクセシビリテイの向上、データ処理と分析の強化、恒久的な価値の保持等について説明があり、デジタルデータは十分に歴史史料となり得るという回答でした。時代は進んで行いきますね。

(仙台市 栗蔵)

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