名著への旅

第71回『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
 アンディ・ウィアー著
 (小野田和子訳)
 早川書房
(2021年12月25日初版発行)


 ある男がある場所で目覚める。身体には管が繋がれており、自分が何者でどこにいるかもわからない。自分は誰で何のためにどこにいるのか。それを紐解いていく鍵は、自らの物理学の知識と基礎的な理科の実験道具だった…。本作は2026 年にライアン・ゴズリング主演で映画化される。

 本書未読のかたは、騙されたと思ってこれだけの情報のみで読み進めてほしい。いわゆる「ネタバレ」が全くない状態で読むのが、一番楽しい作品である。映画の予告編も見ないほうがよい。作者のアンディ・ウィアーは『火星の人』で長編デビューし、同作は『オデッセイ』の邦題で映画化された。

 本作ではある人物が「人類史の大半は食糧確保であった」と言った趣旨の発言をする。思えば、火星に取り残された宇宙飛行士のサバイバルを描いた『火星の人』でも、まず取り組んだのはじゃがいも作りであった。ウィアーは常に「食事」と「睡眠」(とカフェイン)を描く作家であると言ってよいか。

 宇宙開発においても食糧生産は最重要問題であるという。ウィアーが米を主食とする人物の宇宙サバイバルを書いたらどのようになるのか。

(寺)
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