参加体験記

令和7年度東北工業大学「地域未来学」東北地方太平洋沖の地震科学

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日時 令和7年9月13日(土) 14:45~16:15
場所 オンライン講座 
講師 日野亮太氏(東北大学大学院教授)
主催 東北工業大学地域連携センター

 毎年開催されている講座です。昨年と比べてみると、内容に大きな変更や追加事項はあまりありません。昨年発生した日向灘の地震や今年のカムチャッカ半島付近の地震について、東北地方太平洋沖(以後、東北沖とする)地震後に強化された地震観測網によるデータやシミュレーション解析結果などを用いて解説し、東北沖地震の教訓が活かされていることに言及されました。

 昨年は東北沖地震の教訓を5つ挙げていましたが、「巨大地震後の変動は長期間継続する――周囲の地震活動への影響も長期化」が消えて今年は4つになりました。
 一方、新しい動きもあります。
 YouTubeサイトにJ-DASH Channel「東北沖地震の科学」を立ち上げたそうで、一般の人を対象としてアニメ動画を用いて地震の科学をゆっくり解説しています。

 次に、津波、浸水予測シミュレーションを行う東北大発スタートアップ企業が立ち上がりました。この津波、浸水予測シミュレーションはリアルタイム津波浸水被害推計システム・RTi-castのことで、津波の高さ、浸水範囲、範囲内の人口、建物被害等を予測し、30分以内に情報発信するシステムです。南海トラフ地震津波予測システムとしても国に導入されており、日向灘の地震では津波解析を行い、20分後に津波浸水予測結果レポートを提出しています。

 日向灘の地震後、南海トラフ地震臨時情報が発表されましたが、情報の受け手である国民や企業等に対応上の混乱もありました。識者等からの批判的意見もでました。この地震臨時情報発表後の対応・反応を受けて、政府は改善方策を検討し、同情報防災対応ガイドラインを今年8月に改訂しており、内閣府の防災情報のページで確認できます。

 某地震学者は臨時情報の社会的影響の大きいことや臨時情報が繰り返される事による危機感の消失を危惧し、気象庁の発表が安全と危険を示唆することにならないかと警鐘を鳴らします。地震学者が社会活動に影響を与えるような判断をすることが続き、将来の学者を縛ることになると言います。

 某災害情報研究者は今回の臨時情報のようにあいまいで不確実な情報、難しい情報を受け手に正しく理解してもらう方法が大切とし、科学的なデータをイラストや図表を使って数字やメッセージを表現するピクトグタフィやゲームの要素を取り入れるゲームフケーション等の手法も使うなどより伝わりやすいやり方も必要と話します。情報の出し手だけでなく、受け手も南海トラフで起きる地震とは何か、臨時情報とはどういう状況で出されるのかなど、その本当の意味を理解することに力を入れることも必要であると言います。

 某地震学者の危惧も理解できますが、研究成果を広く一般国民にわかりやすく紹介し、災害情報研究者の指摘するような手法等も用い、情報の出し手と受け手の間のあいまい災害情報コミュニケーションを支援していくことによって、災害被害の軽減に役立つのではないかと思います。立場の違いはあれ、地震による災害被害を軽減するために最新の地震科学の知見の紹介を継続する講師の取り組み姿勢はまさに講師の座右の銘「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」を具現しているのでしょう。

 本講座は、以前は1時間の時間枠でしたが、最近は1.5時間に延長されました。今回、講師は時間配分を見誤り、早口となって話し、1時間程で終えてしまったと述解していました。ですが、復習的な内容も多く、大凡は理解できました。毎年、聴講している継続の力のおかげでしょうか。災害時のフェイクニュースに惑わされないように少しずつでも知識を積み重ねていきたいものです。

(仙台市 栗蔵)

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