日時 令和7年7月6日(日) 13:00~15:30
講師 繁田雅弘氏(認知症専門医、東京慈恵医科大名誉教授)、桝村雅文氏(社会福祉法人京都悠仁福祉会)、吉田哲久さん富代さんご夫妻、黒川愛氏(さいたま市認知症フレンドリーまちづくりセンター)
場所 浜離宮朝日ホール(小ホール) オンライン参加
主催(共催)(公益社団法人)認知症の人と家族の会、朝日新聞社メディア事業本部、大塚製薬株式会社
今回の講演は家族に認知症の人がいる場合の接し方や対応などに関するもので、認知症本人の話も聴くことができました。前半は3題の講演、後半は講師が一堂に会してのトークセッションです。
繁田氏はまず認知症の行動・心理症状(BPSD)について説明します。認知症というと暴言、暴力だけという悪いイメージが先行しがちですが、多くの症状があり、本人の性格や環境、心理状態でも変わり、個人差もあります。それぞれいきさつがあっての症状なので、これがわかれば対応も変わり、症状ではなくなることもあると論じます。典型的な症状の「もの盗られ妄想」を例に説明し、相互の人間関係、その時の想いを周囲の人が考えてあげることが大切と言います。
家族が介護する場合、「共依存」が宿命的な問題がおこります。特定の相手との関係が過度に依存し、お互いが相手に依存することで健全な関係を築くことが難しくなっている状態です。家族介護者は過保護、過干渉、評論家風にならないことが大切です。共依存が過ぎると本人の能力や意見の軽視、家族のもえつきや孤立が問題として現われます。外部に支援を依頼することや家族が介護から離れて距離をおくことが必要だと言います。
認知症である吉田哲久さんの体験談。奥さんは若年性のアルツハイマー型認知症と診断され、その後、1ヶ月の入院をするなど急激な変化があり、性格も変わったと話します。主治医に相談し、京都市の認知症と家族の会や常設型カフェを訪ねました。周囲に何事も否定しない優しい人が多くいたことがよかったそうです。本人の希望も実現しながら、おだやかな毎日を過ごすことが大切です。
黒川氏は、新しい認知症観に基づき、認知症当事者、サポーターの社会参加を勧める取り組みが始まるなか、24年7月1日に認知症フレンドリーまちづくりセンターが開設され、活動が本格化しているさいたま市の事例を紹介します。認知症の人や家族の頼りになる場所になっているそうです。
トークセッションでは5つの問いに答える形式で進められました。
①実の親の認知症が受け入れられない。前向きに考えていくためにはどうしたらよいか。
→過保護にしても厳しくしてもよくなく、寛容さが必要。
②認知症の親から身に覚えのないことで辛く当たられるがどうしたらよいか。
→受け流し傍にいては無理なので、離れて距離をおく。介護者の会等に参加して仲間をつくり、他の人のことを知り学ぶ事が良い。
③認知症とわかったが、どうしたら前向きになれるか。
→認知症カフェ等で、当事者同士で話をすると氣が晴れてくるそうです。繁田氏によれば本人は理屈ではわかっていることを言われるのが嫌で、わかっているけどできない。支援者の態度としては「いまのままでいいよ」が最強で普遍的だそうです。
④認知症の親を一人で介護し、孤立している人にどのような助言が必要か。
→いつでも電話で相談できる窓口の体制整備が必要。電話で相談する場合に何が聞けるのか、わかるのかなどあらかじめ分かるなど相談のし易さが大切。繁田氏は介護サービスをいれて自分は身を引き、ほどほどのところでやめ、ぼろぼろになる前にやめることが重要だと言います。介護サービスは早くから使った方がよく、薄い(軽い)サービスを続けていくのが良く、悪くなってからではサービスに慣れるのが大変とも話します。
⑤認知症を薬以外で進行を遅らせる方法はないか。
→繁田氏がまとめます。人と交流する、人と話すことが良い。好きなことをやって達成感を得るのもよい。食事、運動など健康に良いことをバランスよく、個人に適した内容で適度に行うことが大切。認知症になっていない人に対しても今の家族の世話になることを覚悟しておくという心の準備も必要と説きます。
認知症に関して様々な情報が流布しています。今回の講演では具体的にどう考え、行動すればよいのか、助言を与えてくれます。施策としても新しい認知症観即ち、誰もが認知症になり得ることを前提に国民一人一人が自分事として理解し、認知症になっても個人として出来ること、やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間と共に希望を持って自分らしく暮らすことができるような共生社会を目指すと時代になってきています。各自治体の対応活動も進展しています。
認知症の人への対応は、驚かせない、急がせない、自尊心を傷つけない、という3つの「ない」を心得とし、具体的には、まずは見守る、やさしい口調で、おだやかにはっきりとした話し方で、相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応するなど7つの態度が大切と或講演会で拝聴した事があります。認知症ではない普通の人への接し方とも共通点が多く、処し方に慣れていれば悩む事も少ないのかも知れません。しかし、現実に認知症状が現われている親と接している身としては必ずしもそのような態度もできないこともあると実感しています。認知症についてもっとよく知るとともに、誰もがなり得ることを前提に自分事として取り組んでいくことが肝要かと改めて思う次第です。
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