名著への旅

第70回『へろへろ ―雑誌『ヨレヨレ』 と「宅老所よりあい」の人々』

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『へろへろ ―雑誌『ヨレヨレ』 と「宅老所よりあい」の人々』
 鹿子 裕文著
 ちくま文庫
(2019年3月7日 初版発行)


 福岡市内に、認知症を患い、「老人ホームに入るくらいなら、野垂れ死ぬ!」と息巻く一人のおばあさんがいた。

 「宅老所よりあい」は、そんな一人のお年寄りのために、最後まで自分らしく生きることができる場所を作ろうと立ち上がった三人の女性たちによって始まった。本著には、その一人下村恵美子さんと村瀬孝生さんという「ナチュラル・ボーン・高齢者福祉」の達人たちと、その不思議なパワーに巻き込まれていく人々の日々が綴られている。作りたい雑誌や書籍を作ることがなかなか出来ず、スランプ氣味だったフリーランス編集者の著者もその渦に巻き込まれた一人。制作を依頼された雑誌『ヨレヨレ』は、ワンオペで作成し、累計1 万4000 部以上を売り上げる。そして、いつのまにか世話人のひとりとして組織運営にまで関わることに……。

 お寺の一室を間借りして始まった「よりあい」は、〈老人ホームに入らないで済むための老人ホーム〉を作るため、自分たちで土地を探し、寄付を募り、手作り品を作り、職員とボランティア一丸となって売りまくり、あの手この手で必死にお金を集め(あの谷川俊太郎さんまで巻き込んで!)、ついに総額3億2千万円の特別養護老人ホーム建設を実現してしまう。スタッフの心労はかなりのものだったのでは?と心配になりつつも、ついつい大爆笑。迫りくる老後への不安を和らげてくれる一冊です。

(庄)
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