月日 2025年3月8日(土)14:00~16:30
講師 姥浦道生氏(東北大災害科学国際研究所)、青木賢人氏(金沢大学)、
江川新一氏(東北大災害科学国際研究所)、大塩さやか氏(ピースボート災害支援センター)、
後藤寛氏(輪島市上下水道局 ※石巻市より派遣)
主催 東北大学災害科学国際研究所
場所 仙台国際センター 展示棟展示室1-B オンライン参加
東日本大震災と能登半島地震災害を対比して初動期の災害対応、復旧について考えようとするシンポジウムです。パネラーとして災害医療と被災地の復旧復興事業の専門家が入り、1月に視聴した阪神淡路大震災30年シンポジウムとは異なる面からの議論もありました。
4人のパネラーが各々15分の発表終了後、姥浦氏の進行によりディスカッションが行われ、引き継がれたこと、引き継がれなかったこと、引き継ぐ主体、本格的な復旧復興段階へ進もうとする能登半島で何をしていくべきか、などについて議論されました。
防災教育を研究されている青木氏は東日本大震災を契機に石川県民の意識も向上し、津波災害の備えも進み、県も住民の防災教育の推進、学校の防災力の向上、防災教育の強化を図っていると話します。津波犠牲者は2名と少なく、防災教育の成果が出ていたものの、危機感の高い人とそうではない人に二極化したとも報告しています。一方では避難不要地区の人がマスコミ情報により過剰反応して避難したため、道路は車で渋滞し、避難所に入ろうとして鍵を壊すなどの混乱もあったそうです。ハザードを正しく恐れることが必要と強調されていました。
津波は行動で防げるが、地震は構造物の耐震化が必要です。能登地方は高齢者が半分以上で、地域の財政力も弱く、耐震化は遅れたそうです。災害の発生確率が低いので、いかに日常に繋げておくか、次の災害に備えて普段の力をあげておくかが課題であり、災害時に役立つようなことにを平時に備えておくことが必要であると説きます。
医師で災害医療が専門の江川氏は能登地震災害で「水がでない」ことと道路の寸断がなければもっと良い方向で対応できたと話します。災害医療は被災者の救命と被災地域の医療を通常に戻すことが目的であると話します。災害関連死は直接死よりも多く、医療の手が届くことが遅い在宅避難者にも多く、全体の約半数を占めます。普段の医療態勢が貧弱になっている地域では災害時には被災者に十分な医療を施せません。災害医療にスタッフを派遣できる病院を増やしておく必要があると指摘します。
一般の医師は災害医療について認識不足があり、医療機関がハザード対象地区内に存在し、災害を受け易い施設が多くあることから防災を考える医療を提言しています。不十分な災害医療教育を充実し、災害医療の体験・知識を伝えることが重要だとします。自身が所属する日本災害医療学会では一般医療従事者に対して啓発活動を検討しているそうです。
ピースボート災害支援センター(PBV)の大塩氏は2つの災害でも現地に滞在して活動されています。能登地震災害では行政、社協、ボランティアなどの協力関係が良好で、石巻での経験が活かされているが、役割分担が不明確なことや一般ボランティアの受け入れ態勢が不十分だったことはあったそうです。
NPO,NGOは人材の育成や継続的運営資金の確保が課題です。日常的に行政との連携関係を深めることが災害時にも迅速に出動できるようなり、そのためのネットワークの構築などが重要だと言います。
石巻市職員として震災後の復旧復興に携わった後藤氏は、現在輪島市に派遣されています。被災地への派遣応援は制度化され、迅速な応援派遣が行われています。石巻市では全国から相当数の応援を受けましたが、市の予算20年分の復旧復興事業を10年で実施しなければならなかったそうです。能登でも日本全国から応援職員が来ており、初動対応など短期的にはうまくいっているが、長期となると厳しくなるだろうと話します。
復旧復興は市民の納得と共感を得ることとスピード感が必要です。能登では応急仮復旧が完了し、これから復旧・復興へ進む段階です。後藤氏は復旧復興事業におけるマンパワーの問題について、被災地では大きな仕事になり、被災自治体のみで行うのは無理があり、県や国が担うことやハードの巨大事業のやり方を考える必要があると提言します。
最後に、姥浦氏が教訓をどう伝えるか、つないでいくか、平時から考えておき、災害時の対応課題も平時の課題に取り組んでいくことが必要だとまとめを述べて終わりました。
能登地震災害の状況や災害医療等について知ることができ有意義な時間でした。災害医療ではDMATが有名ですが、他にDPAT、JRATもあり、災害支援ではPBVやJVOAD等の組織団体が設立されており心強い限りです。災害対応、避難活動・生活、医療や日頃の防災活動等に関する能登半島地震災害の情報は参考になりました。日本が人口減少、高齢社会へ加速していく中で、個々人も災害にどう備え、どう対応するか、日常的に考え、行動していき、自助の力を蓄えておくことの重要性を痛感します。ですが、これもなかなか難しいことです。
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