今日まで日本語に関する著作は数多いが、この本は少々趣が違う。まず、章立てが奥ゆかしく出来ている。また、その節項目も順次関連しながら発展していく様は舌を巻くうまさである。加えて、日常なかなか知り得ない古文献からの引用が豊富で、適宜配された図版とあいまって、読書する愉しさに溢れている。
第八章「はや教へなん九九の算用」の「47 九九」の項には、九九を表した十世紀の文書図版があるが、「九九八十一」から数え起こし、「一一一」で終わっている。元々の古い形式の九九はこの方式であったことがわかる。
最終章「祈らずとても神やまもらん」も出色の一文。北野天神菅原道真公が、自作の歌に自分の本当の名前を詠み込んでいるという。洛北曼殊院に伝わる秘伝の巻物にこの歌があり、ある文字のところに「秘々」と記されている。その実物図版まで載っているが、よく許可が下りたものである。著者曰く、「この歌には何となく人を励ます力があるような感じがする。」 同感である。ご一読あれ。
(曜)
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