名著への旅

第11回『緋文字』

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 清教徒の新天地、米国ニューイングランド。この地で大いなる過ちを犯したへスター・プリンは、結果ひとりの女の子を産み、それをパールと名付ける。罪の裁きが下され、一生胸からはずすことの許されぬのが、恥辱と贖罪の印としての緋文字「A」である。これを自らの手で、しかも金糸で縫いつけたのである。

 海岸の田舎家で人目を避けた母と子のくらしが始まる。

 一方、へスターの牧師でもあるディムズデイルは、人々の尊崇とは裏腹に、胸の奥に命までもさいなむ秘めごとを抱えて生きる。そしてここにひとつの復讐劇が加わる。牧師は苛烈な苦悶と葛藤を経て、ついに住民の前でその告白を成し遂げるという形でクライマックスに至る。牧師の精神遍歴については、時代と洋の東西、立場は異なるが、本邦では島崎藤村『破戒』の主人公瀬川丑松にその類似性が見い出せる。

 一歩足を踏み込んでみると、この作品の世界に思いを致すことはなかなか易しいものではなく、事実重い内容である。しかし、読もうとする者各人が直に人物たちの思いを摑み取っていくしかない、不朽の名著であることもまた事実である。

(曜)
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