「黒い」岩波新書の赤版である。本書は黒でなければならない。黒はアナキズムのシンボルカラーである。
アナキズム、無政府主義と聞くと、国家の転覆を図る過激な革命主義、と思うかもしれない。その側面があることは否定できない。しかしそれ以上に、アナキズムは個と協働を重視する。本書の「一丸となってバラバラに生きろ」は明白に矛盾した表現であるが、矛盾を恐れずに絶えず自己の変革と相互扶助を志向するのがアナキズムの核心である。
ブレグジット、ポスト真実、フェイクニュースなど、国内外を問わず、「正しさ」の根底が殊更問われる今日にあって、極めて扇情的で挑発的な文体で書かれた本書は、個が個として自由に生きていくための勇氣と希望をあたえてくれる。また、個への分断が、ヒト同士の結びつきの起点であることに改めて氣づかせてくれる。
ちなみに本書の黒い表紙に見えるものは実は帯であり、その下はいつもの赤版の表紙が隠れている。
(寺)
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