名著への旅

編集部イチオシの「名著」をご紹介します。

名著への旅

第27回『風姿花伝』

 誰もが一度は耳にしたことがある書籍ではないだろうか。父である観阿弥とともに能を大成した世阿弥による、能の指南書、理論書である。  能の教えを説いた本であるが、その論の射程は芸能や芸術論に限られない。  かれの論を大づか […]

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第26回『はてしない物語』

 本そのものの魅力が詰まった一冊である。  表紙はあかがね色の絹で、動かすとほのかに光る。パラパラとページをくってみると、中は二色刷りになっている。小学生の頃、装丁に惹かれて母の書庫から引っ張り出したのが出会いだったと記 […]

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第25回『日本語ぽこりぽこり』

 エッセイは日常の微細な出来事に焦点をあて、読者に楽しく「振り返り」をもたらしてくれるが、本書はそうした営みを日本のみならず諸外国(主には米国)との往復を通して与えてくれる。このことは、筆者が「外国人」であって、日本語を […]

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第24回『土』

 長塚の『土』は、漱石が「余の娘が年頃になって、音楽会がどうだの、帝国座がどうだのと言い募る時分になったら、余は是非この『土』を読ましたいと思っている」と褒め称えた農民文学の代表作である。  本著の特徴は、明治時代の農民 […]

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第23回『大阪弁ちゃらんぽらん』

 本書は「辞書」である。表題どおり、「大阪弁」の辞書である。「ああしんど」「あかん」「えげつない」など、テレビなどでもよく聞かれるものから、「あんだらめ」「あもつき」といった宮城ではあまり馴染みの無い言葉も含めて、計20 […]

名著への旅

第22回『1984年』

 1984年4月4日  ウェリントンが日記に書いた、記念すべき一言である。  物資不足と絶え間ない戦争で荒廃しつつある1984年のロンドンは、厳格な統制が敷かれた社会。主人公のウェリントンは、真理省という役所で記録の改竄 […]

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第21回『読書と社会科学』

 「名著」とは何か、という問いかけに対して「古典である」と答えることができるかもしれない。「古典」は人々に読み継がれてきた書物であり、だからこそ「名著」である、と。  たしかに「古典」は「名著」たりうるかもしれないが、で […]

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第20回『足摺岬』

 小欄での私の担当は今回で終了する。最後に、私自身がこの先も長く大切にしていきたい作品を取り上げることにした。  この集は、『落城』『絵本』『小さな赤い花』を始め、著者の作品計10篇を収める(カップリングは『広場の孤独』 […]

名著への旅

第19回『黄色い部屋の謎』

 ガストン・ルルーと言えば、『オペラ座の怪人』の著者としてご記憶の方も多いであろう。本作は1908 年の上梓で、創元社によると「密室ミステリの金字塔にして、世界ベストテンの上位に名を連ねる、名作中の名作」ということになる […]

名著への旅

第18回『古寺巡礼』

 古寺・古美術の見学印象記である本書は、亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』とともに、発表以来数多くの読者に愛されてきた。亀井の本は高校生時代に一度読んだが、これは初読である。  著者がこの時奈良付近に遊んだのは大正7年、29 […]

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第17回『禁じられた遊び』

 あまりにも有名なこのタイトルは、1947年、まず文学作品として世に出(原題は“Jeux Interdits”)、世界中に大変な反響を呼んだ。  戦争が出逢いをもたらしたミッシェルとポーレット。敵機が上空で唸りを上げるフ […]

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第15回『清貧の思想』

 バブル経済崩壊直後に出版された本書は、当時大変によく売れたという。その理由はどうあれ、疑い無く賛辞措(お)く能わざる良書である。当時日本に対する諸外国の関心と質問に答えるため、「日本文化の一側面」として著者が話してきた […]

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第14回『黒い雨』

 1945年8月6日月曜日、広島市、午前8時15分。  原爆による未曾有の戦禍と不安が、『黒い雨』というタイトルによく表われている。自らも被爆した閑間(しずま)重松の『被爆日記』を中心として話が展開され、妻のシゲ子、養子 […]

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第13回『青春を山に賭けて』

 厳冬のマッキンリーで著者が消息を絶ってから27年の歳月が流れた。  本書には、アマゾン河6,000キロ単独イカダ下りを間に挟んで、世界初の五大陸最高峰登頂後までのことが語られている。次なる目標である極地へ向かう前までの […]

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第12回『宇宙からの帰還』

 日本人最長163日間の宇宙滞在記録を残した野口聡一氏が、高校時代に読んで宇宙飛行士になる決意を固めたというのが本書である。  この本の最大の眼目は、「帰還」を果たした宇宙飛行士たちの宇宙体験について、その内面的精神的認 […]

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第11回『緋文字』

 清教徒の新天地、米国ニューイングランド。この地で大いなる過ちを犯したへスター・プリンは、結果ひとりの女の子を産み、それをパールと名付ける。罪の裁きが下され、一生胸からはずすことの許されぬのが、恥辱と贖罪の印としての緋文 […]

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第10回『ロウソクの科学』

 これはロンドンの王立研究所の教授であったファラデーが70歳の年(1861年)、少年少女たちに対し全6回にわたって語られ演じられた公開講演の記録である。記録者はクルックス管を発明した物理学者、ウィリアム=クルックスである […]

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第9回『福翁自伝』

 中学校時分からずっと目の前にありながら、永く読まず嫌いをしてきた本である。どうも「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ人ノ下ニ人ヲ造ラズト云ヘリ」から来る堅いイメージが一因であったようだ。  「フランクリン自伝」などとともに、自伝文 […]

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第8回『風船』

風船 大佛 次郎 著 新潮社 日本文学全集 21 1971年7月20日 初版発行 Amazon  昭和30年に発表された作品である。この前後に目を向けてみると、川端康成『山の音』(29年)、三島由紀夫『金閣寺』(31年) […]