名著への旅

編集部イチオシの「名著」をご紹介します。

名著への旅

第47回『刑務所しか居場所がない人たち』

 最近『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治、2019年、新潮新書)という書籍が話題になっている。いわゆる非行少年には一定数、認知に難のある子たちが含まれており、彼らに対する適切なケアの必要性を、自身の体験や印象を踏 […]

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第46回『バッタを倒しにアフリカへ』

 バッタの大発生による農業被害を食い止め、多くの「ポスドク」の中からほんの一握り(著者曰く一摘み)の昆虫学者になるため、アフリカ・モーリタニアへ向かった若手博士の奮闘記である。  著者は幼いころから「バッタに食べられたい […]

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第45回『アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ』

 「黒い」岩波新書の赤版である。本書は黒でなければならない。黒はアナキズムのシンボルカラーである。  アナキズム、無政府主義と聞くと、国家の転覆を図る過激な革命主義、と思うかもしれない。その側面があることは否定できない。 […]

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第44回『こども東北学 (よりみちパン!セ)』

 生きることは食べることだ。生きるためには食べることが必要であるならば、なにを食べるのかについて考えなければならないし、誰がそれを作るのかについても考えなければならない。東日本大震災、とくに原発事故のあと、「東北」で食べ […]

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第42回『ポケモンの神話学 新版ポケットの中の野生』

 近頃、スマートフォンを片手に公園に集まったり、街中を歩き回ったりしている人たちをよく見かける。それはスマートフォン向け位置情報ゲームアプリの「ポケモンGO」(ナイアンティック/株式会社ポケモン)に夢中になっている人たち […]

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第41回『人はなぜ物語を求めるのか』

 本書は物語論を通じて、人間の思考や理解の方法、さらには人間そのものを探求している。  例えば、自己紹介は自分の来歴を「物語」として語ることであるし、不幸にあった場合には「日頃の行いが悪いから…」と因果付けることで理解・ […]

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第40回『それでも三月は、また』

 あの日、多くの人々が言葉を失った。言葉を生業とする作家たちもまた。このアンソロジーは、詩人・作家17人による、震災後初めての、またはそれに近い作品を集めたものである。  在仙作家・佐伯一麦氏は「日和山」で、港町に住む親 […]

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第39回『一市民の反抗-良心の声に従う自由と権利』

 1846年7月下旬、当時コンコード郊外のウォールデン湖畔で暮らしていたヘンリー・D・ソローは人頭税の不払いにより逮捕され、刑務所に入れられる。誰かが替わりに税を払ったことにより収監は一晩で済んだが、ソローは自らの納税を […]

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第38回『日本の思想』

 手元にある本書は2013年3月15日発行の第93版である。初版の刊行が1961年ということなので、約60年余りで93ほど版を重ねたことになる。現在、流通しているものは、はたして第何版だろうか。  1914年に生まれ、第 […]

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第37回『釜ヶ崎から 貧困と野宿の日本』

 大学生のころより現地に通い、自ら日雇い労働を体験し、今では野宿者支援を行っている著者による、日本最大の「寄せ場」「ドヤ街」である釜ヶ崎のルポルタージュである。国の景気状況に左右されてきた釜ヶ崎の歴史と現状から、日本の貧 […]

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第36回『古代ギリシャのリアル』

 なぜ本書を選んだかというと、著者・藤村シシンという人物に魅力を感じたからである。アニメ『聖闘士星矢』好きが高じてギリシャ研究家の道へ、という来歴もさることながら、本書からは「勉強は楽しい!」という氣持ちが溢れ出んばかり […]

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第35回『代替医療解剖』

 『フェルマーの最終定理』(2000)や『暗号解読』(2001)の著者であるサイモン・シンと、ホメオパシー研究者であるエツァート・エルンストが通常医療の代わりとして用いられている代替医療(ホメオパシー、カイロプラクティッ […]

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第34回『春にして君を離れ』

わたしがこれまで誰についても真相を知らずにすごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったからだ。  『春にして君を離れ』は、人生の節目に何度も読み返したくなり […]

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第33回『まなざしの地獄』

 「社会学をやっている」と言うと、「社会学って何をするんですか?」と毎回問われる。一言でいえば「できごとを他者や社会との関係から考える学問」だろうか。本書は社会学のお手本とも言い得る名著である。  本書の対象は1968年 […]

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第32回『陰翳礼讃』

 昭和初期に書かれた随筆である。便利な西洋の文明装置のコードやスイッチは、純日本風の家屋では目障りに感じられ、どのようにしたら調和させられるかと葛藤する様子から始まる。西洋と日本(東洋)の文明の発達、そして本質的な美意識 […]

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第31回『期待と回想 語りおろし伝』

 今年7 月20 日に亡くなった思想家、鶴見俊輔が対話を通じて語り起こした自伝である。晶文社より1997 年出された上下巻をまとめて文庫化したものである。  鶴見俊輔は多くの著作を残した。かれは純化し、体系化された「思想 […]

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第30回『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』

 数年前から、憲法記念日(を含む連休中)には日本国憲法を読むことにしている。  この本は、井上ひさし氏が、憲法の中でも「これだけは読んでおいてほしい」と思う前文と第九条を、小学生にもわかりやすいようにやさしい言葉にしてみ […]

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第29回『日本語は天才である』

 著者は数々の翻訳を手がけてきた柳瀬尚紀。かれが翻訳する上で駆使してきた、もしくは助けられてきた言葉遊びについての本である。  縦書き・横書き、漢字・ひらがな・カタカナ、読めない漢字にはふりがな(ルビ)を振る、といった表 […]

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第28回『新編 銀河鉄道の夜』

 「銀河鉄道の夜」は、言わずと知れた宮沢賢治の代表作である。しかし、実は作者生前未発表の作品であり、完成ではない。にもかかわらず、名作として謳われているのは、最も賢治らしさが出ている作品だからではないだろうか。  その世 […]