名著への旅

第29回『日本語は天才である』

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 著者は数々の翻訳を手がけてきた柳瀬尚紀。かれが翻訳する上で駆使してきた、もしくは助けられてきた言葉遊びについての本である。

 縦書き・横書き、漢字・ひらがな・カタカナ、読めない漢字にはふりがな(ルビ)を振る、といった表現方法や、回文、アナグラム、押韻、四十八文字を一回だけもちいたいろは歌などなど、日本語が持っている表記上の多様性や特徴が数多く紹介されている。そうした表現や遊び方の幅広さ、機転の効き具合を指して「日本語は天才」としている。

 しばしば非常にくだらないダジャレなどを口にすると「オヤジくさい」だの「ハイハイ」だのといった冷ややかな反応を受けることがしばしばあるが、そうした世のダジャレ好きに勇氣を与えてくれる(かもしれない)著作の一つ。かくいうわたしも、本書には大変勇氣づけられている読者の一人である。

(寺)
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