名著への旅

第27回『風姿花伝』

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 誰もが一度は耳にしたことがある書籍ではないだろうか。父である観阿弥とともに能を大成した世阿弥による、能の指南書、理論書である。

 能の教えを説いた本であるが、その論の射程は芸能や芸術論に限られない。

 かれの論を大づかみすると、各年代や演じる場、状況ごとに、自分が備えている長所と短所とを見極め、絶えず己の見所(=花)を磨き続けよ、ということになろうか。幼年期から老年期までの持続的成長のための努力を説くという点で、本書は人間論でもあるし、俗流に言えば自己啓発の書とも言えようか。

また同時に、そうした成長や見所は、自己を見る他者からの評価を必要とする、とする。つまり、自分は常に他者から見られる存在であることを、世阿弥は忘れていない。この点で、本書は人間関係論の顔をも持つ。

およそ600年ほども昔に記されたものではあるが、現代のわたしたちが読んでも参考にすべきことを多く含んでいる。

(寺)
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