日時 令和6年8月31日(土)13:00~14:30
場所 令和6年度 地域記未来学(オンライン講座)
講師 日野亮太氏(東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻 教授)
主催 東北工業大学 地域連携センター
防災の日の前日、オンラインで日野教授の地震講座を聴講しました。13年前の東北地方太平洋沖地震以後、講師による同名の講演は何度となく拝聴しており、昨年に引き続き参加しました。
元日の能登半島地震、そしてお盆前の8月8日に発生した日向灘の地震は大きな被害や影響を及ぼしました。話はホットな話題であるこの日向灘の地震の解説から始まります。所定の手続に従って、南海トラフ地震臨時情報が発表されました。初めての発表ということもあり、西日本など関係地域の人々のお盆の時の活動に影響を及ぼしました。臨時情報に関してマスコミ等でも大きく取り上げられ、報告されています。課題も確認されたようで、検証のうえ見直しの必要性も叫ばれています。
この南海トラフの臨時情報発表は東北地方と無縁ではありません。2022年8月から北海道・三陸沖にM7.0以上の地震が発生した場合、北海道・三陸沖後発地震注意情報が発表されることになっています。これは巨大地震の発生に先行する活動があった13年前の大震災の教訓から制度化されたものです。
13年前の2月にM5クラスの地震が数度発生し、この結果海底の上下方向に変動が生じました。3月9日にはM7.3 の地震が発生し、震度5弱、津波も観測されました。この地震は想定中の宮城県沖地震か否かと考えたほどで、今でもよく記憶しています。2日後、東北地方太平洋沖地震が発生しました。2日前の地震に続く連鎖の反応の結果です。このよう事実から、臨時情報なり後発地震注意情報が発表されることになりました。もちろん、空振りもあるでしょうし、注意情報なしでも巨大地震が発生する可能性も否定できません。いずれにしろ日頃の備えが不可欠です。
講演では、2011年の東北地方太平洋沖地震の教訓とその対応状況について5項目が提示され、順次説明されました。詳細は割愛しますが、5項目とは次の通りです。
①海溝(トラフ)軸まで断層運動が及びうる→地震のサイズ&津波の最大想定の見直し
②津波即時予測では地震以外の観測も有効→地殻変動・沖合観測による予測の高度化
③2011年地震は日本海溝中央部で繰り返した→日本海溝沿いの長期評価の見直し
④巨大地震活動の変動は長期間継続する→周囲の地震活動への影響も長期化
⑤巨大地震の発生に先行する活動があった→臨時情報、後発地震情報
昨年と比べて講義内容は大きく変わりはないのですが、前述の5項目による整理は今年の特徴といえます。1年間で研究成果が飛躍的に増えていくということはそうないでしょうが、毎年積み上げられた地震学の成果を専門家から拝聴することにより、新たな知見を得ることもでき、日頃の備えのための糧にすることもできます。
講師は最後に孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆からず」を引用して地震研究の取り組み姿勢を表現します。更なる研究を期待し、来年の講演にも参加できることを楽しみにしています。