名著への旅

第6回『レ・ミゼラブル』

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レ・ミゼラブルレ・ミゼラブル
ヴィクトル・ユゴー 著 / 石川 湧 訳
集英社コンパクト・ブックス 世界の名作・18
1964 年11 月30 日 初版発行

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 この小欄用に今回再読してみた。最初に読んだのは中学2、3年の頃。シリーズ名からも判るように、原典を尊重した翻訳で物語の主要な部分を一冊に凝縮したものである。この間12年前に新潮文庫版全5冊を読了した。世界に冠たる名作であり、人類の遺産と言っていい。ミュージカルや演劇などでも人氣が高いのはご存知のとおりである。1815年、10月初旬のある日からこの大河小説は流れ出す。

「ミゼラーブル」という語に象徴される登場人物、および当時のフランス社会と民衆の物語である。主人公ジャン・ヴァルジャン、ジャンに救い出されるコゼート、その母ファンティーヌ、主人公を追う警部ジャヴェール、コゼートの恋人マリユス、強欲人テナルディエの娘でマリユスを慕うエポニーヌ……。皆それぞれに「ミゼラーブル」であるが、いずれも己が是とした道を貫き通した人間たちであり、その生の流転が哀しくも美しい。なお、原書の古い版からの挿絵が付いているのがうれしい。

(曜)


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