参加体験記

開館45周年・建物築150年記念企画展 戦争と庶民のくらし(4月27日~7月7日)

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日時 令和6年5月4日(火)及び15日(土)11:00~11:30
展示解説 佐藤学芸員
場所 仙台市歴史民俗資料館2階展示室
主催 仙台市歴史民俗資料館

 昭和52年に榴岡公園整備のため、旧陸軍歩兵第四連隊の大隊本部施設は兵舎を残して解体されました。残された兵舎を改装し、昭和54年(1979年)仙台市民俗資料館として開館しています。同館では開館45周年、建物築150年記念の企画展として「戦争と庶民のくらし」が開催されています。
 ゴールデンウイーク後半の5月4日、榴岡公園の一角にある同館をしばらくぶりに訪ねました。企画展では仙台と戊辰戦争以後の戦争に関係する資料が展示されています。
 連日、ウクライナやパレスチナ・ガザ地区の戦争関連ニュースが報道されています。歴史上、戦争は絶えないものですが、日本ではこの150年を振り返ると前半期の太平洋戦争終了時までは戦争が継続していたといってよいのでしょう。戦場は国内に始まり、中国大陸など海外へ移り、その後再び国内にも戻りました。戦後はサンフランシスコ条約締結まで米軍により占領統治され、その後は現在まで戦争のない時間が続いています。
 現在、仙台市は「杜の都」と称されていますが、明治時代以降、軍都としての性格も有り、陸軍幼年学校も置かれていました。満州事変を首謀した板垣征四郎や石原莞爾は仙台幼年学校の出身です。日清、日露戦争から満州事変、日中戦争などにも仙台の連隊から各地へ出兵するなど、軍都として深い係わりがありました。軍都仙台の呼び名は満州事変以後から使われているようです。企画展会場に置かれていた、同館調査報告書38集を買い求め、関係報告文を読んでみました。
 次いで、18日(土)に行われた関連イベントの展示解説にも参加しました。2階企画展展示室から佐藤学芸員による解説が始まりました。同資料館は仙台市博物館とは異なり近代(戊辰戦争以後)の資料を保存しているそうです。
 明治6年徴兵制の開始とともに、明治4年設置の東北鎮台が廃止され、仙台には新たに仙台鎮台(明治21年に第2師団となる)、歩兵第四連隊などが配置されていきます。軍都としての体制を整えていきました。
 仙台藩は戊辰戦争では朝敵の幕府軍に加わって戦いましたが、その後に起こった九州での西南戦争では旧藩士が政府軍として参戦しています。その後、明治17年朝鮮で起きた甲申事変に対して仙台鎮台から派兵されました。明治27年、日清戦争に第2師団が出征しており、この戦争による戦没者数は第2師団が全体の4割を占めるなど仙台との関係は深いものです。日露戦争になって初めて全国各地一律に兵士が招集されて戦う全国的な戦争体制となりました。大正時代に入り、第1次世界大戦・シベリア出兵、昭和になると満州事変、日中戦争、第2次世界大戦へと続いていきます。
 佐藤氏の解説で理解も深まります。展示品のうち、市民からの寄贈品の貴重性に関する話なども興味深く拝聴しました。武運長久を祈願し寄せ書きが書き込まれた日章旗の数々、黒塗りの教科書など写真や映像などでしか見たことがなかった品々を実物で観察することも出来ました。
 「戦争と庶民のくらし」と題する企画展は平成5(1993)年度に始まり、展示テーマや展示資料を変えながら、開催を続けています。開館以来、継続的に収集してきた戦時資料を出来るだけ、わかりやすく展示紹介することを目標に企画されたそうです(調査報告書38集 佐藤雅也 近代仙台の戦争と庶民のくらし)。佐藤学芸員によると、軍関係の当事者や家族の方などがご存命の頃は問い合わせなども多くあったそうです。関係の生存者が減少していき、時の経過と共に人々の記憶からも薄れていくようですが、実物の展示と専門家や関係者による説明など行いながら、後世の人々に伝承していくことは重要なことでしょう。
 仙台の近代史についてその一端を知ることができました。

(仙台市 島田昭一)
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