日時 令和6年4月6日10:30~12:00
講師 仙台市博物館学芸員の3氏(酒井昌一郎氏、寺沢慎吾氏、鈴木かおる氏)
場所 博物館ホール
主催 仙台市博物館
修繕工事のため2年半程の休館を経て、この4月からの再開館記念祭企画展「こりゃ めでたい」関連の講座です。歴史・美術の学芸員3氏による「めでたい」をキーワードにした展示資料の魅力を解説するものです。短い時間でしたが、講座の前に企画展会場に行き、作品を鑑賞してきました。
館長の話によると、博物館は昭和36年に設置され、現建物は昭和61年に建築されました。30年以上が経過し、空調設備等の老朽化に伴い大規模修繕工事を行いました。この建物のデザインの特徴は、平面形状は四角形を基本としながらも入口右側の建物壁面が60度の角度で手前側に出ていることです。これは来場者を包み込むという意味が込められているそうです。今回は体験型展示コーナーなど新しい試みも採用されていますが、来館者にも積極的な提案、意見を求めていきたいということでした。
最初のトークは司会役を兼ねる酒井氏です。福の神=七福神から始まります。「福」の意味を「さいわい、とみ、たすけ」の3つに分析し、「たすけ」から神・・・七福神(毘沙門、寿老人、弁財天、恵比寿、福禄寿、布袋、大黒天)の話に展開します。毘沙門が財産、武芸、信仰の神のようにそれぞれ役割があります。布袋は人間の坊さんです。みすぼらしい姿をしており、他の神様に対して異彩を放っていますが、福袋をもち、精神上のよりどころともなります。企画展のチラシ一面に大きく布袋様の像が印刷されています。また、恵比寿と大黒天はタッグを組まれることが多く、商売の神様として有名です。
七福神巡りが全国各地にありますが、仙台にも奥州仙台七福神があります。毘沙門は満福時、寿老人は玄光庵、弁財天は林香院、恵比寿は藤崎えびす神社、福禄寿は鈎取寺、布袋は福聚院、大黒天は秀林寺に祭られています。七福神の他に魔除け、疫病除けには鍾馗も有名で、鍾馗を描いた絵画も展示されています。
2人目は美術担当の寺沢氏です。「めでたい」を語源から「愛で」+「甚(いた)し」と解きます。
中国古代でめでたい鳥である瑞鳥、鳳凰を取り上げます。鳳凰は伝説上の鳥ですが、桐の木に宿ることから桐の木は神聖な木とされています。塩釜出身の絵師小池曲江の「鳳凰図」を例示します。桐の木は博物館周辺にも見かけるとかで、5~6月頃、花が咲きます。
次は江戸時代後期~明治時代にかけて流行した有卦絵(うけえ)です。陰陽道による運勢占いで、干支により7年間の吉運(有卦)、5年間の不運(無卦)に分かれることを受けて、吉運の始まる年の人に贈られる縁起のよい浮世絵です。福につながる「ふ」に始まるものが縁起がよいとされ、展示作品の例示として、福寿草、福助、富士山などのめでたいものを探す絵画も紹介されました。
3人目の鈴木氏は工芸、染色、人形などが専門です。「めでたい」ことの一つとして、人生における結婚を取り上げ、江戸時代の大名家の婚礼調度について解説します。次に、獅子と牡丹の話が続きます。獅子は百獣の王、牡丹は百花の王と称されており、獅子には牡丹が似合いのようで、付き物になっています。さらに、めでたいものとして松竹梅鶴亀を取り上げます。企画展のチラシ二面に掲載されている重さ5.8kgもある布団、縹縮面地松竹梅鶴亀模様夜着にはめでたいものがいっぱいです。そして、企画展展示100点のうちの48点の人形群も圧巻です。
博物館愛好者だけでなく、博物館の再開館は学芸員の方々にも待ち遠しかったことでしょう。七福神、奥州仙台七福神、鳳凰と桐、獅子と牡丹等々ご教示いただきました。企画展会場ではカメラ撮影もOKということで、展示作品をスマホで撮影する来場者もいました。私も今年の干支の辰に因んで、雪渓筆の竜虎図幟を撮っておきました。令和の改修が完了した博物館で、学芸員の皆さんの今後のご活躍を期待したいと思います。