『創造論者 VS. 無神論者』
岡本亮輔 著
講談社
2023年9月7日初版発行
生物は進化を経て今の姿になったのか? それとも神によってあらかじめ設計されたものであったのか? 日本で教育を受けてきて後者を採用する人は限りなく少ないかもしれない。しかしアメリカでは、この二つの問いを巡って長くからの対立がある。本書は、そうした創造論者と無神論者(およびより徹底的な新無神論者)との戦いの歴史と現在を明瞭に論じてくれている。
両者の対立は、1925 年にテネシー州の町デイトンでの反進化論法を犯したとされる新任教員スコープスをめぐる裁判から語られる。それ以降も、特に創造論者から教育をめぐる裁判闘争として展開されることとなる。他方、宗教の徹底的否定を主張する新無神論者も無神論を啓蒙するテキストを配布するなど「宗教化」している様子は、信じることのままならなさを感じさせる。
本書冒頭でも示される通り、現在の「宗教」のあり方は混沌としている。ジェダイやマラドーナ、空飛ぶスパゲティを信仰する人びともいれば、日常的には「神!」だの「聖地巡礼!」だの宗教的な言葉が用いられる。また、科学と陰謀論との共謀も散見される現代にあって、本書が紐解く論争は対岸の火事ではないだろう。
(寺)