2011年3月11日、津波による壊滅的な被害を受けた日本製紙石巻工場。 本著は、自らも被災し、工場閉鎖の不安を抱えながら、日本の出版文化を支えた人々の、復興への日々を真摯に聞き取った不朽のノンフィクションである。
石巻工場には、特別、本好きでなくとも耳にしたことがあるだろう書籍の用紙や文庫用紙、コミック用紙を生み出す<8号機>という抄紙機がある。地元宮城県に暮らしながら、自分が日々手にする書籍の
紙が石巻で作られていることを知らないで生きてきたことに恥ずかしさを覚えている。
「8号機が止まる時は、この国の出版が倒れる時です」
自らも被災し、家族や家を失った社員もいるなか、わずか半年という短期間で、社員一丸となって<8号機>を復活させる。
あの震災によって、我々は地方の現実を突きつけられた。多くの決断が本社のある中央(東京等)で決定され、それを無理にでも担うのはいつも地方の役割であることのやるせなさ。それでも、仕事への誇りと地元石巻への熱い想いが皆をかきたてたのだろうか。
「この本は過去の出来事の記録としてだけではなく、今後起こりうる自然災害に向けての未来の書として読んでほしい」と著者の佐々さんは語る。
ある特別な会社組織の奇跡的な復興談としてではなく、自分の属している会社組織だったらどう対処できるかを振り返り、組織内における「リーダーシップ」を見直すためにも必須の一冊になるだろう。
(庄)