本来、あまり怖い話は得意ではない。もちろん霊感は皆無、体験談も持ち合わせていないため、初めのうちはやや戸惑い氣味にページを捲った。しかも本書は「実話怪談」というジャンル。誰かの本当に体験した話と思うと恐怖も増す。あとがきと解説から読むとどうもそのジャンルの正統派(?)ではないらしい。変化球から手をつけるのも面白い。
フィクションに慣れすぎていて、カタルシスを安易に求めると肩透かしを食らうかもしれない。不思議なことは不思議なままでというのがあるべき姿なのだろうか。80話収録されているうち、個人的なお氣に入りは『永遠の魔女』『キッズセラピー』『運命の人』『すり抜けていった女』『早く来てよ』『リアルタイム』。特に『永遠の魔女』はその後について取材を続けたら壮大なドキュメンタリー映画になりそうだ。(完成前に何か起きそうだが……)
我々は怖がるという体験すらエンターテイメントにしてしまう貪欲な生き物だ。思えば、怪談とは、小泉八雲のころから書くというより蒐集するものだったのかもしれない。一種の【聞き書き文学】といえるだろう。『リアルタイム』には後日談がありそうとのこと。それを楽しみに正統派の実話怪談も読んでみたくなった。すでに沼にハマりそうである。
(庄)