参加体験記

磁気工学国際会議2023 市民講座「知っているようで知らない磁気」

  • LINEで送る

講師 高梨弘毅氏、梅津理恵氏、安藤康夫氏
日時 令和5年5月7日13:30~16:30
場所 東北大学金属材料研究所 オンライン参加有り
主催者 2023磁気工学国際会議(Intermag)現地実行委員会

 5月に開催される国際会議を前に行われた市民向け講座です。オンライン受講しました。1964年から始まったIEEEの分科会Magnetic Societyの国際会議ですが、5年毎位にアジアでも開催されており、日本では京都、東京、名古屋に次いで仙台で行われるそうです。
3名の講師(東北大の名誉教授、教授)が一般の人に向けてわかりやすく、磁性材料と私たちの生活、放射光と磁性材料、磁氣の医療応用と題して講演しています。
磁氣というと磁石を思い浮かべますが、発電機やモーター、スピーカー、あるいはトランスなどの電力設備などで日常的に目にします。パソコン等に使用されるHDやメモリーのような磁氣記録媒体もあります。磁氣の利用は日常生活では不可欠なことですが、講座名のように知っているようで知らないことが多いのだろうと思います。
金属材料研究所の本多光太郎初代所長がKS鋼を発明して以来100年余り。現在、最も強力な磁石Nd-Fe-Bネオジウムホウ素磁石を東北大出身の佐川眞人さんが発明するなど同研究所の活躍は脈々と受け継がれているとのことです。

 周期表の中の元素が単体で磁性体になるのはFe,Co,Ni,Gdの4元素だけです。他の元素でも合金にすると、例えばCu2MnAl合金のように、磁性体になるそうです。金属材料研究所の梅津教授は60の元素の中から組み合わせて合成し新しい磁石をつくる研究を進めています。合成体の組成分析に兵庫県のスプリング8や青葉山のナノテラスで放射光を利用するそうです。
原子が1つの小さな磁石であり、それが一定方向に整列している状態の物質が磁性体です。原子を構成する電子は自転運動をしているため、磁石となります。電子は最も小さな磁石であり、いわばナノ磁石といわれるそうです。

 磁氣の医療用へ応用する分野では、生体磁場センサーが開発されています。生体が出す磁力線を検出する磁氣センサーを使い、体内に非侵襲的に測定します。脳や心臓の検査に関する現在の方法に対して、脳波に対して脳磁図、心電図には心磁図のような検査成果が得られます。大がかりな装置を必要とせず、普通の状態をリアルタイムに詳細に調べることができるそうです。発展性が高いと考えられる生体磁場センサーの実現に向けて東北大の安藤教授は研究を進めています。
安藤教授に対して磁氣を利用した健康器具に関する質問もありました。磁氣そのものというよりは電流を流すことで発生する2次的な熱の効果があるかも知れないとしたうえで、磁氣の効能については、学問としては未確立で、磁場を与えても血流は変化しない等を指摘して、現時点では未知であると説明されていました。

 「知っているようで知らない○○」の○○にはいろいろな言葉が入ることでしょう。おそらく、磁氣の関係本を読んでも今日の講演のよう短時間にすんなりと理解が深まることは難しいのではないかと思います。備忘録に付けておきました。(仙台市 島田昭一)

  • LINEで送る