名著への旅

第32回『陰翳礼讃』

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 昭和初期に書かれた随筆である。便利な西洋の文明装置のコードやスイッチは、純日本風の家屋では目障りに感じられ、どのようにしたら調和させられるかと葛藤する様子から始まる。西洋と日本(東洋)の文明の発達、そして本質的な美意識の相違に話題が及ぶ。日本人は陰翳(いんえい)とともに生活することを餘儀(よぎ)なくされたことで陰翳のうちに美を発見し、やがて美の目的に添うように陰翳を利用するようになったと指摘している。

 表題のほかにも短編が収録されている。「陰翳礼讃」で、日本建築の中で一番風流に出来ているのは厠(かわや)であると云えなくはない、とあるように5編のうちの1編は厠について語られているのもまた面白い。時代を越えて、現代でも日本人の実感として理解できる部分が必ずあるだろう。

(志)
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