参加体験記

「地域未来学」東北地方太平洋沖の地震科学

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主 催 東北工業大学
開催日 10月15日(土)13:30~14:30
講 師 日野亮太氏(東北大学教授)
場 所 オンライン講座

 東日本大震災から12年目も半年以上が過ぎ、あの日の記憶も薄れがちなこの頃です。震災後、復興大学が始まり、大地震、大震災に関する調査、研究、活動等の多様な講義が行われていました。現在は東北工大の地域未来学に受け継がれています。今年は7月から12月迄オンライン形式で、「未来構築」と「防災・減災」2つの分野の科目で講座が進められています。

 今回は日野教授の講義を聴講しました。11年前の地震は多くの人には想定外だったと思います。プレート境界型地震についてはその後の調査研究等により地震の解明や理解も深まってきています。講師は震災後、その成果を本講座等で継続して解説されています。

 3月11日の本震前に1ヶ月前と2ヶ月前にゆっくりとしたすべりによる地震があり、2日前の9日には最大前震(M7.3)が発生しています。前兆現象のメカニズムもわかってきており、前震と本震の連続性は余効すべりに原因あるそうです。最大前震の後、ゆっくりとしたすべり「余効すべり」が未破壊の断層を刺激し、11日の本震を引き起こしました。地殻が表層部は弾性体、内部は粘弾性体という性質をもっており、地震後、地殻内部の変形が長期にわたって続く粘弾性体緩和のために余効すべりが起こります。11年前の地震後も東北地方の沖合南部では余効すべりが卓越しているそうです。

 11年前の巨大地震は平均発生間隔550~600年、M9程度の地震と評価されています。宮城県沖ではM7.5級の地震が約38年周期で発生しています。この繰り返しにより、すべり面内に「すべり残し」が累積され、その結果、約600年間隔の巨大地震が引き起こされます。869年の貞観地震、1454年の享徳地震そして2011年の地震が比定されています。従って、当面はこの規模の地震の発生ほぼないのでしょう。ただ、周期の短い宮城県沖地震はリセットされて新しいサイクルに入っていると考えられ、今後30年以内の発生確率は50%と高く、余効すべり等の影響でさらに高くなる可能性もあります。

 講義の後半では津波の予報関係について解説がありました。地震速報でも津波速報にしても迅速で精確な予測に向けてさらに進歩を期待したいものです。

 日本海溝沿いの東北沿岸地域は、M7級で30年以内に高い確率をもつ地震が多く想定されています。今年3月16日のM7.4、震度6強の地震は記憶に新しいところです。この地震ではわが家の近所の建物にも11年前の地震以来の被害が散見されました。

 1978年の宮城県沖地震も2011年の巨大地震も宮城県内在住時に体験している者とはいえ、一方で慣れからか、鈍感さもでます。緊張感を持続させることは難しいことですが、折に触れて氣づきの機会を持つことが必要なのでしょう。

(仙台市 島田昭一)

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