参加体験記

『源氏物語』と漢文学

  • LINEで送る

第1回東北大学イブニング講座―メトロでカルチャー
「平安文化の陰影―文学と美術」<『源氏物語』と漢文学>

講師:佐竹保子氏(東北大学文学研究科教授 中国文学)
日時:2015年12月15日(火)18:00~19:30
場所:東北大学マルチメディア教育研究棟6階大ホール

在天願作比翼鳥、在地願為連理枝。

天上では二羽一体で飛ぶ比翼の鳥に、地上では二本の枝がくっついた連理の枝になろう。

8世紀 唐の玄宗皇帝とその愛人楊貴妃の悲劇的な恋物語を描いた「長恨歌」の一節である。ここから「比翼の鳥」「連理の枝」は夫婦の仲のむつまじいことの 例えとなり、男女の深い契りを意味するようになった。長恨歌は源氏物語をはじめ日本文学にも多大な影響を与えていると言われている。作者の白居易自身や長 恨歌の内容を知り、今以上に源氏物語を楽しみたかったので今回の講座に参加した。

講座は【紫式部と漢籍】【「源氏物語」桐壷巻と漢籍】 の二つに分かれて進められた。平安時代、公文書の読み書きは漢文でするのが普通だったので、男子は漢字で書かれた漢籍を学習したが、女性が読んでいると眉 を顰められる性質を持っていた。【紫式部と漢籍】では子どもの時から漢籍に親しんだ式部が、成長し周囲から陰口を言われるも、中宮彰子に見いだされ漢籍の 手ほどきをするまでを紫式部日記を引用して解説した。【「源氏物語」桐壷巻と漢籍】では源氏物語第一帖となる桐壷巻を読み進めながら、長恨歌、更に長恨歌 に影響を与えたといわれている「李夫人伝」の3作の比較をした。

桐壷巻は非常に大まかに説明すると「当時の最高権力者である帝が一人の 女性(=光源氏の母)を寵愛するも、周囲から嫉妬され、それを氣に病んだ女性が亡くなってしまう」という話だ。桐壷巻が長恨歌・李夫人伝と共通する記述は 「寵愛の深さ」や「(死による事で)帝の悲嘆」の部分になるが、決定的に異なる箇所がある。それは長恨歌・李夫人伝では描かれなかった女性側からの視点が 足されたことだ。氣位の高い女御からのいじめ、一人だけ愛されてしまった負い目、御付きの命婦が故人を偲ぶ姿など宮中で生きる女性の「愛されない悲しみ」 「愛される苦しみ」「女性同士を大切に思う氣持ち」が、源氏物語では紫式部の宮中での生活を反映して繊細に描かれている。

この講座が終 わった後、偶然にも友人達からたてつづけに連絡が来た。転職したが前の会社の待遇の方が良かったので戻りたい、大学を辞めて就職を考えている、出産し仕事 復帰に向けて保育園を探している、新婚で子どもを儲けたいが正規雇用では無いので今は難しい…など様々な話を聞いた。一人一人考え方も生き方も違うので、 私は自分の人生で選んだ事しか話せなかった。けれど、「愛されたい」という女性の願いは千年前と全く変わっていない氣がする。こういった相談をうまく受け 取れるようになりたいし、自分自身ももっと器用に生きたい。その為にも、更に女流文学の世界に浸りたいなと感じた。

(名取市 小塙)

  • LINEで送る