特別展「知の大冒険 -東洋文庫 名品の煌めき-」
開催日時 2022年4月23日(土)~6月26日(日)
場所:東北歴史博物館
6月18日に東北歴史博物館の特別展「知の大冒険 -東洋文庫 名品の煌めき-」を見に行ってきました。三菱第三代社長岩崎久彌が設立した研究図書館のコレクションを間近で見ることができました。特に氣になったのは、欧米の人々が19世紀頃に見聞きしたアジアの様子の記述や描写と、アジアのいろいろな国の文字で書かれた仏典や事典などです。
欧米列強がアジア諸国に開港や通商を迫り、アジアと欧米の交流が盛んになり始めると、ヨーロッパの人々はアジアの国々の様子を伝えるために様々な絵を描きました。商品の流通で間接的に知っていたアジアの人々の生活を実際に目にした人々にとっては興味が尽きなかっただろうと思われます。一方で万里の長城の絵がまるでヨーロッパの城砦のように描かれていたり、長崎の港にオランダの港のような雰囲氣があったり、アジア人の目からするとちょっと違和感を覚える風景もありました。よくよく解説を読むと、人から伝え聞いた港の様子をオランダの画家が想像で描いたと説明がありました。考えてみれば、行ったことのない場所を描くためには、どうしても自分が知っているものをモデルに描くことになり、完成品も何となく自分たちの身近なものに引っ張られるだろうな、と妙に納得しました。そして、それらの絵を当時のヨーロッパの人々がアジアの様子だと思って鑑賞していたのかなあ、と思うとちょっと不思議な感じがしました。一方で情報化した現代社会を生きている私たちは、世界のことを知った氣になっているけれど、実際には自分たちというフィルターを通した世界を見ているのかもしれないと考えさせられました。
中央アジアのいろいろな文字で書かれた仏典や学問の書籍からは、それぞれの時代の僧や学者による翻訳の繰り返しで、広い地域に仏教や学問が伝播したことがわかり感慨深くなりました。もちろん、それぞれの文字を読むことはできないので、なんだかすごそうだという表層的な感想にとどまり、あらためて文字が読めることのありがたさを感じました。朝鮮の世宗がつくらせたハングルを普及させるための「訓民正音」という書籍も展示されており、ハングルを漢字で解説していることに文字の歴史を感じました。
全体を通して、アジアの歴史と文化の豊かさを感じ取れる、知的好奇心を刺激される楽しい特別展でした。また、土曜日の東北歴史博物館は、弓矢をイノシシなどに見立てた板に向かって射る狩猟体験や今野家住宅を使った探検イベントなどを開催しており、家族で楽しく休日を過ごせる場所だなあと思いました。
(仙台市 たぬきのこ)