名著への旅

第58回『戦争のころ 仙台、宮城』

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 「戦争を知らない多くの人たちにとって、戦争とはどんなものなのか自ら知ろうとしない限り、遠い昔の出来事で終わってしまいます」「戦争は突然始まるものではなく、その前に国民を戦争に向かわせるための様々な仕掛けがなされる」(「おわりに」より)

 2月下旬以降、現実の戦争の報道に触れない日はないが、まだまだ「対岸の火事」という感覚もぬぐえない。

 「戦争を知らない」世代の我々は日本が過去に起こした戦争のことをどれだけ知ろうとしているのか。まだ間に合ううちに、「戦争を知る」世代の貴重な声に耳を傾けなければ、同じ過ちを繰り返しかねない。

 敗戦で焼却したという「特高警察」資料も、部分的ながら「知事引継書」(宮城県公文書館所蔵)から発掘するなど、記録を丹念に読み取るとともに、第二師団があり軍都でもあった仙台・宮城における戦時下の人々の生活を証言・エピソードを交えて再現している本書は、「戦争を知り、考える」上で、示唆に富み、より多くの人々に読んでもらいたい一冊といえよう。

(前進)
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