東北工業大学「地域未来学」講座11
わくわく、キラキラのまちづくり
(東日本大震災後の気仙沼のまちづくりの考え方)
講師:小野寺憲一氏(気仙沼市保健福祉部長)
日時:2021年8月28日(土)
場所:オンライン開催
東日本大震災から10年が過ぎ、11年目に入りました。オリパラや新型コロナ、全国各地で頻発する災害などの情報にすっかり隠れていますが、この10年、32兆円を使った震災復興事業のハード施設は整ってきました。ただ、これで被災地は本当に復興してきているのだろうかという疑問は残ります。
本講座は気仙沼市の復旧復興に尽力された市役所職員の小野寺憲一さんの講演です。コロナ禍で利用拡大したオンライン講座により開催されました。
気仙沼市は大きな被害があったところです。講師は被災当時は現在と同じ保健福祉部に所属し児童福祉の担当だったのですが、翌年から震災復興の部署へ異動し、まちづくりの仕事を9年ほど担いました。復興計画に直接関与はしていないが、計画を具体的に実践していく立場になったとのことです。
講師の話は明快でわかりやすく、そして、何よりも明るくなっている気仙沼の雰囲氣を代表しているかのようでした。また、話の展開も良く、質疑の時間も含めた1時間というやや短めの講演時間をうまくまとめています。
真の復興とは何か、という問いに対して、地域の社会的課題の解決が真の復興であると考えたそうです。災害に強いまちづくり、人口減少対策、主力の水産業の課題、人材の育成などの気仙沼の課題に取り組みます。震災復興をテコに、あるいはバネにして地方創生、地域再生を進めていくということでもあったのでしょうか。
具体的な課題解決策の一つに人材育成のプロジェクトがあります。震災の2年後の2013年から人を中心としたまちづくりを目指して、産業人材育成・経営未来塾を開始します。10年経た現在、育成塾からも地域の人材が育っていき、気仙沼のまちづくりが見えてきたそうです。講師は、まちづくりには終わりも完成もなく、常に次の時代のよりよい人と人のつながりを求めて、気仙沼のまちづくりは続いていく、と地元紙で述べています。これが真の復興、即ち、みらいに向けたまちづくりなのでしょう。
気仙沼には震災後何度か訪れていますが、道路の復旧工事や大島への橋梁新設工事などインフラ施設の見学が主でした。インフラ施設は国や県の力でも復旧が進みますが、まちの復興には地元の人の力が不可欠でしょう。
貴重な話を拝聴する機会となりました。
(仙台市 島田昭一)