<特別展>ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展
日時:2021年7月9日(金)~9月5日(日)
場所:仙台市博物館
今回の古代エジプト展の大きな見どころはミイラのCTスキャンでした。ミイラを破壊・劣化させることなく重層的にミイラの様子がわかる画期的な研究方法だそうです。展示では実際の亜麻布に包まれたミイラと、その内部の様子をスキャンした映像を見ることができ、ミイラの体内に土製の人形が納められている様子などがわかりました。古代エジプトでミイラにしてもらった人も、ヨーロッパでCTスキャンにかけられて、日本で展示されることになるとは思ってもみなかっただろうなと、不思議な感じがしました。また、ミイラに副葬される壺に納められた内臓を分析することによって、当時の人々がかかっていた病氣がわかったり、死者の書などに書かれている文字の筆跡鑑定から書いた人を特定しようとしたり、様々な方法で古代エジプトを理解しようとする研究が進められていることがわかりました。
その他の展示からは、エジプトの人々の日常生活や死生観を身近に感じることができました。棺に描かれた様々な神や死後の世界の様子から、亡くなった人の死後の幸せを願う様子がわかりました。また、亡くなった人に食べ物をお供えしたり、様々なものを司る神の小さなお守りを持っていたり、亡くなった人の名前を刻んだものをお墓の近くに置いたりする様子は、日本のお墓の価値観や、神社などでお守りを買って帰る習慣に似ていると感じ、より親しみがわきました。ハヤブサやトキ、ヘビなどを神としてとらえ、神殿に動物のミイラを納めていたこと、時代が下ると青銅製の動物の像が大量生産され売られるようになったことなど、習慣の変遷も興味深かったです。
死者の書や棺に書かれた文字についても考えさせられるものがありました。多くのものはヒエログリフと呼ばれる象形文字が使われており、文字を書くこと自体にとても時間がかかり、装飾的であればあるほど亡くなった人の地位や権威が強調されることがうかがえました。一方で、もう少し速く書けるヒエラティックで著された死者の書もいくつか展示されていました。より多く人のために文字が使われるようになると、文字の簡便化が図られるのかなと考えました。文字の簡便化については漢字からかな文字が作られたことや、中国でも簡体字が作られたことなどにも似て、使用頻度と書き易さ、文字の持つ権威の関係など興味が尽きません。古代エジプトの人々が文字によって亡くなった人の名前や事蹟を書き残し、それを近現代に解読した人がいることによって、現代を生きる私たちが古代エジプトの一端を垣間見ることができる有難さを感じました。
全体として、古代エジプトの高度な技術と現代社会の高度な技術が結びつくことによって時空を超えて人間の営みが伝えられていく様子に、人間の熱量とあくなき探究心を感じる体験となりました。
(仙台市青葉区・たぬきのこ)