作家(文筆家)、編集、校正、装丁、印刷、製本、営業、取次、書店員、本屋。それぞれ異なる持ち場で、「本」に関わることを生業とし、その仕事をこよなく愛す10人のエッセイ集である。
青葉区花京院にある「ボタン」という本屋さんで行われたトークイベントで、この本と出会った。発行者である「三輪舎」の中岡祐介さんと執筆者の一人、出版社の営業職である橋本亮二さんから製作過程や完成後の取り組みについて興味深い話を聞くことが出来た。それまで、本を選ぶ基準は「好きな作家」の書いたものかどうかくらいだった私にとって、自分が手にした「本」にどのくらいの人々がどんな想いで関わっているか、じっくり考える時間となった。すべての書物は、誰かから誰かへの贈り物なのかもしれない。
本を取り巻く経済的環境はどんどん厳しくなっているという声はかなり前から聞こえてくる。しかし、この本に関わる人たちからは、本づくりにまだまだ未知の可能性を感じているのが伝わってくる。
一人のエッセイを読んで、その方の別の著作を読んだり、その方が今の仕事に携わるきっかけとなった本を読んだりと寄り道をしながら、読み終わるのがもったいなくて、ちびちびと1年以上かけて読み終えた。
手触りの良いその本は読む前から持っているだけでウキウキした氣分になった。初版の表紙の版画は赤。2刷は緑、3刷はオレンジ。いつか本をこよなく愛する友人にこの1冊を贈ろうと思う。
(庄)