名著への旅

第51回『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』

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『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』
先崎 学 著
文藝春秋
(2018年7月15日初版発行)

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 藤井聡太二冠の活躍が華々しく報じられ、またベテラン勢のタイトル挑戦が続くなど、将棋界は益々の盛り上がりを見せつつある。こうした近年の盛り上がりの裏で、ひとり病に苦しんでいた棋士がいた。羽生九段と同い年の、先崎学九段である。

 2017 年、「不正ソフト使用疑惑問題」と自らが監修を務める将棋漫画の実写映画化への対応による多忙とプレッシャーとが重なり、先崎は急激な体調の異変を感じる。精神科医である兄が飛んできて、明らかにうつ病であると判断され、その後、先崎の闘病が始まる。

 うつ病は脳の機能が低下することから、頭脳スポーツである将棋の棋士にとっては致命的である。対局中に集中が続かない、スラスラ解けていた詰将棋が解けない、などと闘いつつ、後輩棋士や女流棋士、羽生九段などとの交流を通じて、どうにか立ち上がろうとする苦難が記録されている。

 うつ病は「心の風邪」などと呼ばれるが、その克服の困難さは風邪の比ではないことが本書からはよく伝わる。年内にはドラマ化もされることが決まっているが、先崎九段の優しい書き口とともに、うつ病という病の手強さに触れてもらいたい。

(寺)

 

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