参加体験記

シンポジウム「脳科学と芸術との対話」

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シンポジウム「脳科学と芸術との対話」

  講  師:セミール・ゼキ 氏(ロンドン大学教授)
       宮島 達男 氏(東北芸術工科大学副学長・現代美術家)
モデレーター:大隅 典子 氏(東北大学大学院医学系研究科 教授)
  日  時:2011年1月21日(金)18:00-19:45
  場  所:仙台市民会館小ホール
  主  催:東北大学脳科学グローバルCOE

 タイトルの興味深さと「同時通訳」にひかれ参加申込をしました。
 セミール・ゼキ氏は、一般向け著書『脳は美をいかに感じるか-ピカソやモネが見た世界』(2002・日本経済新聞社)『芸術と脳科学の対話-バルテュスとゼキによる本質的なものの探求』(2007・青土社)が邦訳されている著名な神経科学者。宮島達男氏は、「デジタルカウンター」作品などで国際的に注目を集める現代美術家であると同時に東北芸術工科大学副学長。
 対談は、宮島氏がゼキ氏へ質問する形で進行。心地よい音楽を聴くとドーパミンが出て脳の報酬系が活性化すると言われているが、「美」を見たときにも同様に活性化するのは確かである、しかしそこだけが働いているわけではなく、まだまだこれから究明するおもしろい分野である、とか、色や動きの認識に比べ、「形」の認識について脳の働きの分析をするのは現状では難しい、など脳科学でわかってきたことの説明がされていました。「形」の中でも「人の顔」は特別なようで、「顔」を認識する脳の部位と「表情」を認識する部位は別々に存在することがわかってきたらしく、足のつま先を描いた作品はほとんどないのに、顔を描いたアートが非常に多いことからも、人間同士のコミュニケーションにとって「顔」が特に重要であることが推察される、と。
  「美は脳の中にある-美は作り手だけが生み出すものではなく、鑑賞者の脳の中で生み出している」というゼキ氏の話に、「アーティストだけでは芸術は成立せず、観客がいて、美を感じてはじめて成立する」と考えていたという作り手としての宮島氏も大いに共感。
 脳科学も芸術もつきつめていくと哲学的になるものですね。最近『大きな羊のみつけかた-「使える」美術の話』(齋正弘・2011・仙台文庫)を読んだときにも同じことを感じ、二人のやりとりを思い起こしました。 
 ゼキ氏の著書や宮島氏の作品にぜひふれてみたいと感じた心地よい夕べでした。

(仙台市若林区 前進)

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