研究者インタビュー

コロナ禍の今、稲垣忠先生・久保順也先生からコメントをいただきました。

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コロナ禍の今、稲垣忠先生からコメントをいただきました。

─学校でのICT化はその後どのように進展していますか?

 7年前と大きく違うのは、ICTが教師の指導の道具から、子どもの学びを支える学習環境へと移行がはじまったことです。タブレットを使った家庭学習向けの教材や、スマートフォンで授業の動画を見られるサービスが普及しました。「学校にないから(ICTを)使わない」ではなく、「学校にはないけど子どもたちは使っている」のです。
 少子化が進むのに不登校の子どもたちが増えていることや通信制の高校が伸びていることなど、従来の学校の枠組みが揺らぎつつある中、ICTは学びの基盤として新たな役割を果たそうとしています。2019年12月には文部科学省から「GIGAスクール構想」が打ち出されました。全国の小中学生に1人1台、PC等の端末を整備し、「個別最適化された学び」の実現が目指されています。端末整備だけでなく、授業観・学習観、さらには教師や学校の役割の転換へとつながる大事業がはじまっています。
 当初は2023年度までに端末を整備するとされましたが、コロナ禍への対応として2020年度内の整備へと前倒しされ、各地の教育委員会が整備に奔走しています。やや急ぎ足すぎる懸念もありますが、大きな環境変化に対し、学校教育の存在価値を賭けたパラダイム転換が迫られていると言えるでしょう。

─今後のオンライン授業対応への展望と課題は?

 本学では5月の連休明けから全面的にオンライン授業を実施しました。ウェブ会議サービス等を使って時間割通りにリアルタイムで行う授業と、動画や教材を準備して学生が任意の時間で授業を受けられるオンデマンド型とを科目によって選択して実施しています。小中学校においても休校期間中に一部でオンラインでの朝の会や双方向型の授業、動画配信等が試みられました。
 大学ではオンライン授業を維持していますが、多くの小中高校では対面授業を再開しました。しかし、今後の第二波、第三波への備えを考えると、ちょっとおさまったからといって安易にオンライン授業を止めて全面対面形式とするのはリスクがあります。また、オンデマンドでは理解できるまで繰り返し視聴できるなど、対面にはないメリットもあります。授業・授業外・家庭のいつどこで、何を、どのように学ぶのかを状況に応じて柔軟に切り替えられるハイブリッドな学習環境を維持しておくべきでしょう。
 オンライン授業は、教員個人の創意工夫としての実践から、学びのインフラをいかに保障するかという観点から、教育委員会を中心に地域全体で取り組むべき段階に入っています。これから進むGIGAスクールによる端末整備は大きな助けになると考えられますが、学校・家庭の通信環境の確保、ソフトウェアやコンテンツの選定、運用を支援する人材の確保など、課題は山積しています。「一時しのぎの対応」で終わらせることなく、情報化、少子化を見据えた新たな学習環境の礎として、ICTが活用されていくことを期待しています。

(以上、稲垣忠先生より)

コロナ禍の今、久保順也先生からコメントをいただきました。

─長期の休校期間は子どもたちの心にどのような影響を与えたと考えられるでしょうか。

 今回の突然の休校措置は、感染対策として仕方がないことではあるものの、その理不尽さに怒りを感じたり無力感を感じたりした子も多かったのではないかと思います。これは東日本大震災の時の、地震や津波、原発関連被害といった災害によって突然日常生活を奪われ、なすすべもなく現状を受け入れるしかなかった体験に似ています。そして子どもたちは、今回の休校措置も仕方がないことだと分かっているからこそ、怒りの向け先がなくて抱えこむことしかできません。震災の時も、悩んでいる親の姿を見て、自分自身のしんどさを隠してしまう子が数多く見られました。いじめ問題もそうですが、子どもは周りの大人に負担をかけたくないと考えて、悩んでいてもそれを打ち明けてくれないことがあります。
 一方で、休校で氣持ちが軽くなった子たちもいます。ふだん学校に行くことが辛い子たちは、心の重荷である通学から解放されて楽になったのではないでしょうか。ただし6月に入って学校が再開され、部活や行事も返上となり急ピッチで動き始めた学校生活に戸惑ったり疲れを感じたりする子も今後増加するでしょう。

─周囲の大人として、そんな子どもたちに対する心のケアの注意点にはどのようなことがあるでしょうか。

 当たり前のこととして、疲れたら休むということが必要だと思います。大人でも、休みなく働いていたら心や体を壊してしまいます。子どもならなおさらです。休校明けの学校生活は忙しく、例年以上に子どもたちは頑張っていて、疲れがたまっていることを意識しておくべきです。
 また子どもたちは、楽しみにしていた部活や行事が中止となり、日常生活でも我慢を強いられてフラストレーションもたまっています。大人は、こうした子どもたちの抱える不満に耳を傾け、共感しながら解決策を一緒に考えていく必要があります。子どもたちがリラックスしたり発散したりできるイベントを子どもと一緒に考えて、家庭で実施できると良いでしょう。
 テレビゲーム大会や料理作り、室内キャンプなど、家の中だからこそできることを、家族で楽しみながら取り組めると良いですね。

(以上、久保順也先生より)
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