<東北大学金属材料研究所講演会[2011年春季]特別講演2>
『科学コミュニケーションの戦略 ―「伝える」から「伝わる」へー』
講師:鎌田 浩毅 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科 教授)
日時:2011年5月24日(火)14:45~15:45
場所:東北大学金属材料研究所2号館講堂
研究者向けの講演会のようでしたが一般聴講も可だったので聴きにいってみました。
鎌田先生は、最近テレビでもよく見かける、奇抜なファッションが印象的な方ですが、そのファッションは元々学生の講義離れを防ぐための方策だったとのこと。第1回の講義では400人全員が来るのに、回数を重ねるうちに段々と出席者が減っていく、ということが京都大学でも多いようで、「今日の先生のファッションはどんなのだ?」という興味をひいて、まずは講義室に来てもらおうと考えた、とのこと。それは「つかみ」であって、そこから話にひきこむ術もいろいろと駆使するのでしょう。
初めのころは学生の興味も知識レベルも考えずに、学会発表のような内容で講義を進めて失敗した、という先生でしたが、「相手の関心」に関心を持つことを基本に、分かりにくい専門用語を使わない、ビジュアルで見せる、質問・感想・意見を回収し、即授業の中で応えていく、などたくさんの工夫をしているんですね。90分の講義を、集中力が持つ15分ずつ6プロットにして組み立てることは、TVプロデューサーの話から学んだとか。
研究者が専門分野以外の人たちに研究のことを伝える活動を「アウトリーチ(啓発・教育活動)」というそうで、その目的には、(1)研究資金の獲得、(2)後継者の育成、(3)一般社会への認知などがあるとのことですが、学生への講義は(2)にあたります。先生の専門は「地球科学」「火山学」ですが、最近では高校で「地学」を履修せずに大学に進む人も多いそうで、大学での一般教養講義だけでなく、高校や小・中学校への出前授業がとても大事と思っている、とのこと。(3)との関わりでは、地震・火山列島の日本に住むからには、「地球科学」「火山学」でわかってきたことを多くの市民に知ってもらい、人生設計の中で考慮してほしいという願いを持っていることが、話を通して強く感じられました。
相手にわかってもらえるように話す、というのは「科学」に限らず、家庭や職場などにおいてもコミュニケーションの基本ですよね。そのためにいろいろと手を尽くすことが本当に大事なんだなあ、と実演で教えていただいました。
(仙台市若林区・男性 逢戸利一)