アイヌの美しき手仕事 柳宗悦と芹沢銈介のコレクションから
日時:2020年1月25日(土)~3月15日(日)
場所:宮城県美術館
久々に見た本格的なアイヌ関連の展示でした。小学生のときに修学旅行の自主見学でなんとなく選んだ施設(函館北方民族資料館だったのではないかと思いますが定かではありません)で、初めて見たアイヌの装束に圧倒されたことが強く印象に残っています。
柳宗悦は民藝運動の創始者、日本民藝館の創設者であり、優れた審美眼を持った人物だったようです。芹沢銈介は、型絵染作家であると同時に世界中の民俗資料の蒐集家でもあります。芹沢が初期に蒐集していたアイヌコレクションは戦災で多くが焼失したそうですが、焼失後に再び衣装や工芸品を集め、それらが現在に引き継がれています。この企画展は日本民藝館と静岡市立芹沢銈介美術館の所蔵品がかなりの割合を占めていました。
展示されていた衣装は、オヒョウの樹皮やイラクサなど素材の色そのままの生地に、テープ状に切った赤や藍色の布を縫い付けたものが多数ありました。アイヌといえば「藍地に刺繍」のイメージがあったのですが、そういう衣装はあまり多くないのかもしれません。
帰宅後に少し調べてみたところ、「本州で藍染めに使われる蓼藍(たであい)は北海道では育たないが、蝦夷大青(えぞたいせい)という植物でも藍染めが可能である」とか、「蝦夷大青から染めるには大掛かりな仕掛けが必要になるがそういう痕跡や伝承が見つかっていないため、アイヌには藍染めの技術がなく藍地の布はすべて交易で得ていたと考えるのが適当だ」とか、アイヌにおける藍に関して諸説あるということが分かりました。
財布やヘラ、動物の骨や角からできた煙草入れなど日用品類もいくつか展示されており、衣装同様それらにも文様が施されていました。魔除けの意味もあったという独特の文様は素晴らしく、魅力的でした。
柳と芹沢のコレクションから、アイヌ関連以外の蒐集品も展示されていました。柳のコレクションでは琉球王朝時代の紅型(びんがた)、芹沢のコレクションでは前期のみ公開だったロシアの少数民族の魚皮衣が見事でした。魚皮衣は文字どおり、鮭などの魚の皮でできた衣です。鱗は取り払われているようでしたが表面は魚の皮の模様が面白く、ゴワゴワやガサガサしているのか、それとも滑らかなのか、触り心地が氣になりました。展示替え後、魚皮衣と入れ替わりで出品されるコレクションにも興味があるので、もう一度足を運ぼうかと思っています。
「まなびのめ」編集部 三上志穂