石巻市内で子どもを対象にお絵かき教室を営みながら、創作活動をしていた画家の柴田滋紀さん(著者)は、2011年3月11日に起きた東日本大震災で自らも被災し、自宅を津波で失い避難所生活を余儀なくされる。慣れない避難所生活のなか、日々の衣食住の確保が最優先とされ、周りの大人たち自身も氣持ちに余裕のない状況で、後回しにされがちだった「子どもたちの心のケア」の必要性に氣づき、発災10日後に、「石巻こども避難所クラブ」をスタートさせる。その後、県内外の支援者の協力のもと、地域住民の理解を得ながら、「NPO法人にじいろクレヨン」を立ち上げ、民間で児童館「のくのくハウス」を開設し、地域とつながりながら、子どもが安心安全に過ごせる居場所を作る活動を、現在も続けている。本著はその活動が生まれる経緯を克明に綴った一冊である。
東日本大震災からまもなく10年目を迎えようとしている。その間、日本国内だけでなく、世界中あちこちで、多くの災害が起こり、どこに暮らしていても「被災者」になる可能性から逃れられない時代に我々は生きている。そんな時、求められるのは、地域に暮らす人々やコミュニティのつながりの強さだろう。そして、子どもたちという地域の「未来」を育てることで、どんな困難な状況にあっても、『立ち上がる力』をはぐくんでいく「にじいろクレヨン」の活動は、地域の希望である。
(庄)