名著への旅

第47回『刑務所しか居場所がない人たち』

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 最近『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治、2019年、新潮新書)という書籍が話題になっている。いわゆる非行少年には一定数、認知に難のある子たちが含まれており、彼らに対する適切なケアの必要性を、自身の体験や印象を踏まえて訴えるものである。同書を著すきっかけは、山本譲司『獄窓記』(2008年、新潮文庫)を読んだことであったという。

 『刑務所しか居場所がない人たち』は、山本譲司が秘書給与流用により収監された刑務所で出会った累犯障害者たちの現状とその問題について、極めて分かりやすく記した書物である。累犯障害者とは、知的障害や身体障害、精神障害を抱えているが適切に福祉につながることができていないが故に、軽微な犯罪を繰り返してしまう人びとのことを指す。そして刑務所の一部は、彼らに対応するために福祉施設化する一方で、一般の福祉施設が「犯罪者を出さないように」と刑務所化することもあるという。

 「加害」と「被害」の両方を生み出さないための包摂の仕組みが求められる意味が、ここには詰め込まれている。そしてその根本は、多様な人びとがそれぞれ幸せに生きる社会を、日々の実践で作ることではないだろうか。

(寺)

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