編集部だより

「決」

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 今年の夏も猛暑で辟易していたところへ、お盆に入ってからは台風と大雨に悩まされ、9月を前にしてまたもや大豪雨となり、各地で甚大な被害が出てしまいました。お亡くなりになられた方、また、被災された方々に心よりお悔み、お見舞い申し上げます。

 ところで、7月の下旬ころに聞いたラジオがきっかけで、各地に伝わる日本の伝説というものにふと興味が湧きました。伝説とくれば柳田国男とすぐにピンときたので、青空文庫に行ってみたら、そのものズバリ『日本の伝説』という著作があり面白く読みました。これに味をしめて他のものにも食指を伸ばし、『年中行事覚書』『野鳥雑記』『野草雑記』と読み進めました。私も田舎育ちなので、昔の風俗・風習・方言の話にはストンと胸に落ちるものがありました。そして最近読み終わったばかりものが『地名の研究』。これも大変に面白く、よくぞここまで研究したものだと舌を巻きました。これが縁で今、「地名」「地形」というものに興味関心が向いています。遥か太古の昔から現在に至るまで、人々が自然や地形、地名というものにどう関わってきたか、という壮大な歴史に茫洋とした思いが抱かれます。

 「地形」についても読み始めました。つい昨日のことでしたが、冒頭に述べた台風や大豪雨による河川の決壊・氾濫ということについて新たに学んだことがあり、内心驚いてもいます。今書いたように、堤防の破壊を「欠壊」と書かずになぜ「決壊」と書くのか、ということです。今までは単に慣用的にそう言うのだろう、くらにしか考えていませんでした。物の本によると、「決」という字だけで、「堤防が崩れる」という意味があるということです。しばらく振りに先ほど漢和辞典を引きました。三省堂『新漢和中辞典』「決」の項5番目の意味として、何と「きる。こわす。堤防をこわす。」と出ているではありませんか。また他の情報によると、「夬」には「かける」とか「えぐる」という意味を持っているということです。先の本では、「『央』の一部が削られて『夬』になる。削り取るのは『サンズイ』だ」、とさらに独自な解釈をしています。漢和辞書やネットで小篆による「決」の字源を見てまた驚き。「サンズイ」の部分がまさに川の奔流そのもので、堤防の一部をえぐっている図に見えてきます。

 国や地方自治体関係者の方々の努力は多とするにやぶさかではありませんが、壊れては土を嵩上げ、また壊れては嵩上げ式の対策では、やはり根本的な解決策にはならないように思います。何とか有効な手立てはないものでしょうか。

(ここでまた「決」か……。再び三省堂の辞書を引いてみる。【解決】解明決定。いっさいかたがつく。)

参考文献
日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】 竹村公太郎 PHP文庫 2014年

 

「まなびのめ」編集部 佐藤 曜

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