名著への旅

第46回『バッタを倒しにアフリカへ』

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『バッタを倒しにアフリカへ』
前野ウルド浩太郎 著
光文社新書
2017年5月20日 初版発行

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 バッタの大発生による農業被害を食い止め、多くの「ポスドク」の中からほんの一握り(著者曰く一摘み)の昆虫学者になるため、アフリカ・モーリタニアへ向かった若手博士の奮闘記である。

 著者は幼いころから「バッタに食べられたい」という夢を持ち、ファーブルに憧れて昆虫学者への道を歩み始め、博士号を取得。ポスドク(博士号取得後、任期制の職に就く研究者)たちのイス取りゲームで勝利し、任期なしの正規職として研究機関等に就職して生活するためのお金を稼ぎつつ、存分に研究したい。このイス取りゲームの勝敗のカギとなるのが論文である。新発見をすれば論文を出せる。論文が無ければ研究者の就職では相手にもされない。

 著者の研究対象であるサバクトビバッタはアフリカで大発生して深刻な飢饉を引き起こしてきた。しかし、バッタに関する論文は1万報を超えるものの、サバクトビバッタの野外観察はほとんど行われて来ず、野外での生態が未だ解明されていないと知る。そこで新発見のチャンスに賭けて実験室を飛び出し、バッタの本場へ乗り込み、自然に翻弄される。

 研究者として正規の職を得ることの難しさが著者の体験を通じて分かりやすく描かれている。苦境に陥った時の発想力や、人間関係構築の技は参考にできる部分があるかもしれない。何よりもとにかく、バッタへの愛と熱意が伝わってくる。読後には爽快感が味わえるだろう。

(志)

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