近頃、スマートフォンを片手に公園に集まったり、街中を歩き回ったりしている人たちをよく見かける。それはスマートフォン向け位置情報ゲームアプリの「ポケモンGO」(ナイアンティック/株式会社ポケモン)に夢中になっている人たちである。
1996年に任天堂の小型ゲーム機「ゲームボーイ」用のソフトとして「ポケットモンスター」(以下、ポケモン)が発売された。本書は、ポケモンに熱中した一人の人類学者が著したポケモン論である。
筆者は、フランスの人類学者レヴィ=ストロースが提唱した「野生の思考」という概念を、ポケモンを遊ぶ子どもたちの姿の中に発見する。「野生の思考」は、人間が芸術や神話など何かを想像することができる能力である。ゲームの世界の中で草むらに分け入りポケモンを捕まえ、名前を与え、分類する。自分が捕まえたポケモンを友だちのそれと交換し、所有しているポケモンを取捨選択しながら自分なりに最善のチームを作り出して対戦する。こういった一連の行為に、現代に息づく「野生の思考」の姿があるという。
たかがゲームを遊んでいるといって侮ってはいけない。ゲームを通じて、人間が本来備えているはずの創造性が芽吹く兆しを見ることができる。
(隼)