編集部だより

事実をコツコツ積み上げること

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 昨年11月末、東北社会学研究会という学会にて「『ポスト真実』と民主主義のゆくえ」というシンポジウムが開催され、なぜか(?)登壇者としてお声がけいただいたので3カ月ぶりに仙台を訪れました。「真実」よりも「感情や信念への訴えかけ」が影響力を持つ、ということを持って「Post Truth(ポスト真実/ポストトゥルース)」と定義されています。2016年末に英国にて時代を表す言葉に選出されたことが話題になりましたので、耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
 さて、シンポジウムの内容はひとまず置いておいて、ちょうどその時期にはある大きな問題を抱えておりました。それは指導している学生の卒業論文の締め切りを控えていたことです。卒業論文は、言わずもがなですが、学生生活の学びの集大成でありますし、提出しなければ卒業できないという最も重要な科目の一つです。「まなびのめ」の読者のなかにも卒論で苦しんだ記憶がある方も(もしくは苦しすぎて覚えていないこともありますが…)いらっしゃるでしょう。また卒論は、学生同様、指導する側も氣力と体力を使う作業で、締め切り後は安心感もあってグッタリとなってしまいます。わたしは今年度の卒論締め切り後、2カ月ほど風邪が抜けませんでした。

 卒論をみていて、また学生のレポートなどを見ていて日々思うことは、事実を積み重ねることの重要性です。大学は研究・教育機関であり、学生への教育の源になるのは日々の研究です。研究の基礎は、事実を追求し真摯に記述することです。ここには、間違ったら修正することも含まれます。そして学生の学びは、科学研究(の一端)に関わることで実現されるものだと思います。そうであれば、学生の卒論やレポートもまた、事実の追求・記述を原則とします。

 シンポジウムにて、自分たちの大学教育を反省する話題も出ました。自分でも反省するところなのですが、しばしば学生確保のために学問の楽しいところ、いいところを強調し宣伝してしまいがちです。しかし科学は「わかったつもりになること」「楽に単位をとること」でもないですし、大学は「アルバイトをたくさんして社会経験を積む”だけ”」の場所でもありません。学外活動が学生生活とその後の人生を豊かにする要素であることを認めつつも、やはり知的に探求することの楽しさと、「事実をコツコツ積み上げること」の意義を学んで欲しいと思います。

 「まなびのめ」で紹介しているイベントも、研究者がコツコツ集めた「事実」の一端だと思います。「ポスト真実」の時代にあって、科学・大学は「事実」を常に大事にする場所であって欲しいものです。

「まなびのめ」編集部 寺田征也
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