参加体験記

死者のゆくえ

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曹洞宗・第44回教化フォーラム「死者のゆくえ」

講師:佐藤 弘夫 氏(東北大学大学院文学研究科 教授)
日時: 2014年11月10日(月) 13:30~15:30
場所:メルパルク仙台

 冒頭、講師の佐藤弘夫先生は「日本思想史」特に「鎌倉仏教」が専門で、これまでにも様々な宗教・宗派の催しで講演をされた経験をお持ちとのご紹介。
 「お墓」のあり方には、時代によって変遷があるようで、鎌倉時代あたりの中世では、誰のお墓か表記がないのに対し、近世の江戸期では法名・戒名など表記されているのが一般的になったとのこと。その違いのもとには、死や死者に対する思想の違いがあると考えられますが、そのあたりは実はまだあまり研究がされていない問題なのだとか。というわけで、「仮説ですが」とことわった上で、先生のお考えを披露してくださいました。
 それによると、中世は「浄土信仰」が強い時代なので、「現世は仮の世界、浄土(理想世界)へ旅立つのが幸福」と考えられていた。なので「死者はお墓に留まっているわけではない」という感覚だったのだろう。やがて、室町・戦国時代と進むにつれ、徐々に「目に見える世界」を信じるように進み、死者は遠い理想世界に行くわけではない→死者の居場所が明確に必要→誰が入っているかわかるお墓へ、と根本にある考えと伴にお墓のあり方が変化したのでは、とのこと。なるほどたしかに、と思えますね。
 すでにわかっていることをお聴きするだけでなく、まだはっきりとはしていないけど、という仮説段階のお話を聴くことができたのは、むしろ「研究」に触れられた感がありました。
 さて現代は、必要以上に宗教性を遠ざけてしまったために、目に見えないものを読み解く力、見分ける力が衰えている、と先生は指摘されています。お墓参りやお葬式も単なる形式ではなく、「亡くなった方とつながっている感覚」を持つためにこそ重要、そういうことが現在迎えている超高齢社会において、心の劣化を防ぎ、お互いに心豊かに生きていけることにつながるのでは、と結ばれていました。よりよき現世を生きるために心がけたいものです。
(仙台市若林区 古墳大臣)
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