研究者インタビュー

子どもと一緒に保育を考える

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フィンランドの保育室

 私が最も驚いたのは、子どもたちが自分の受けている保育について考え、また社会や政治について考え、それを言葉にしていたことです。フィンランドを例にとれば、0歳児から5歳児を受け入れる日本の保育所にあたる施設と、就学前の1年間に通う就学前クラスがあります。そうした施設の子どもたちの部屋は居心地のよさが重視されています。また壁面の装飾は、日本のような可愛らしい飾りだけではなく子どもたちにも理解できるように工夫して表現された、保育方針が掲示されています。

 また職員が学びの記録と評価をまとめた一人ずつのファイルが、保護者だけでなく子ども自身も見られるように置かれています。まだ文字が読めない子どもも自分が写っている写真を見て、職員や保護者に「なぜこの写真が選ばれたの?」と尋ね、そこから自分の保育について話し合ったり考えたりするのです。

 一方職員たちが集う部屋には、書類の山は見当たりません。リラックスできる椅子とテーブルが置かれていて、コーヒーや紅茶、お菓子を楽しみながら談笑できるよう配慮されているのです。職員室は、職員相互のコミュニケーションの場として重視されているからです。職員は高度な専門職として処遇され、一人当たりが受け持つ子どもの数はわずかに8人。以前は7人だったのが財政的な理由から8人に増えた時は、国民的な反対運動が起きたということでした。

 「あなたは日本で何人の子どもを見ていたの?」と聞かれ、「30人くらい」と答えたところ、「あなたは魔法使いね」あるいは「それは犯罪よ」と言われました。

 保育者の数が充実している北欧では一人ひとりの子どもにしっかり目を向けることができ、「保育者は子どもに話すのではなく、子どもと話すべきだ」という姿勢が徹底しています。集団行動ができるようになったり、指示に従うことができるようになることは、時には必要です。しかしフィンランドやデンマークでは、たとえば集合の指示に従わず、砂場の砂を不思議そうに観察している子どもがいたら、隣に保育者も共にしゃがみ込んで、一緒に不思議がり、子どもが納得するよう対話を重ねて集団行動に加わるよう促します。子ども自身が今学ぼうとしていることに目を向け、それを尊重し、記録して他の職員や保護者、本人と共有することで、主体的な成長を支援しようとしているのです。

日本でも充実しつつある子育て支援

(取材=2017年8月8日/仙台大学LC棟2階 柴田研究室にて)

研究者プロフィール

仙台大学 体育学部子ども運動教育学科 准教授
専門=幼児教育学・比較保育

柴田千賀子 先生

《プロフィール》(しばた・ちかこ)1975年福島県生まれ。幼稚園教諭として勤務後、研究者に。福島大学大学院 人間発達文化研究科 修士課程修了。修士(教育学)。桜の聖母短期大学の講師、 准教授を経て、2016年より現職。著書に『子どもと共に育ちあうエピソード保育者論』『子どもの育ちを支える 保育内容総論』『転換期と向き合う デンマークの教育』(いずれも共著)など。