トークイベント「まずは下地から」青木 淳(建築家)× 杉戸 洋
講師:青木 淳 氏(建築家)
杉戸 洋 氏(東京藝術大学美術学部絵画科油画 准教授)
日時:2015年 5月17日(日)14:00 ~ 15:30
場所:宮城県美術館 アート・ホール
宮城県美術館の企画展「杉戸洋展 天上の下地 prime and foundation」の関連事業であるトークイベントに行ってきました。
杉戸さんは平面のペイントだけでなく空間的発想や全体の構成に興味を示していらっしゃいました。今回も宮城県美術館の空間に合わせて特別に制作して加えたものが多数あり、こだわりの展示がされていました。トークイベントではこの展覧会に際して、対談した青木さんの設計した建築物や、宮城県美術館の設計者である前川國男氏の邸宅を見るために江戸東京たてもの園に足を運ばれ、それらから感じたことなどをお話されていました。
青木さんはこの日に初めて展示室内を見たそうで、こことここは黄金比になっている、この作品はこの位置から見てセンターライン上に配置してある、と作品や展示室の図面を映してご自身が氣付いた点を解説していました。建築家らしく構成の部分に目が行くようでした。杉戸さんの作品は構図にも黄金比を使用しているそうですが、青木さんは空間も含めて「この展覧会は目に見えない黄金比だ」と評していました。
途中からは展示に関する謎解きを始めました。中でも宮城県美術館の展示室にある作り付けのガラスケースと、その前に立てられた柱と屋根のある造形作品群についてのお話が面白かったです。実際、その謎解きは正解で、ガラスケースをピアノの白鍵、その前に立てた柱は黒鍵に見立てて制作・配置したそうです。ガラス1枚(1つの白鍵)の中央に作品が置かれ、それはまた柱(黒鍵)の真正面になるという状態です。わたしは展示室を見ただけではピアノの鍵盤を模していることには氣付けず、俯瞰の視点はさすがだと感じました。
トークイベントに参加しなければ展示に隠された秘密に氣付くこともなかっただろうと考えると、とても貴重な時間でした。展覧会とイベントタイトルにある「下地」とは構成のことだったのだろうと解釈しました。