名著への旅

第38回『日本の思想』

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 手元にある本書は2013年3月15日発行の第93版である。初版の刊行が1961年ということなので、約60年余りで93ほど版を重ねたことになる。現在、流通しているものは、はたして第何版だろうか。

 1914年に生まれ、第二次世界大戦を経験した著者が捉えた「日本の思想」が描かれている。「戦争体験をくぐり抜けた」著者による、「日本の思想」の批判であり、その展望がわかりやすく記されている。なぜ日本は戦争へと歩んだのか、その背景となった思想の功罪をわかりやすく描いている。

 いま、本書のキーワードとなっている「であること・すること」を取り上げてみる。私たちは〇〇である存在だ。上司である人もいれば部下である人もいる。また、親である人もいれば子である人もいる。〇〇である以上、役割が必ずついて回る。それでは民主主義における政治とは「である」ものか、「する」ものか。著者によれば、それは「する」ものだという。民主主義における政治は、すべてのひとびとが「する」ことにより支えられるべきだという。ただ、日本の場合、どうも政治が政治家「である」者の役目として考えられる傾向にある。それはなぜか? 本書を読むと、現代にも通じる日本の思想の特徴がよくわかるだろう。

(隼)

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