名著への旅

第37回『釜ヶ崎から 貧困と野宿の日本』

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 大学生のころより現地に通い、自ら日雇い労働を体験し、今では野宿者支援を行っている著者による、日本最大の「寄せ場」「ドヤ街」である釜ヶ崎のルポルタージュである。国の景気状況に左右されてきた釜ヶ崎の歴史と現状から、日本の貧困の状況を丹念かつわかりやすく描いている。

 野宿者に対してしばしば「自己責任」や「怠け者」の烙印が押し付けられる。しかし本書からは、かれらは労働意欲の無い人々ではないことがわかる。例えば、1000円分のアルミ缶を集めるためにかかる時間は10時間だという。時給に換算すれば100円だ。そうした割に合わない仕事をしているのは、他に仕事がないからだ。かれらは好景気時には重宝され、景気が下降すると簡単に切り捨てられる存在なのだ。仕事や経済からだけでない。医療や社会保障制度からゆっくりと切り離されていった結果としての野宿者なのである。

 著者の実体験や多くの事例から、「日本の縮図」としての釜ヶ崎の様子、そして日本の現実の一端がよくわかる。

(寺)

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