編集部だより

こげば 思はる 『草枕』

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 昨年11月下旬から自転車に乗り始めました。もうすぐ3カ月になろうとしています。
 自転車に乗ったのは6年前の震災時、ガソリン不足で車に乗れなかった時以来です。この時は1週間でめげてしまいました。震災直後は冷え込みが厳しく、轍や足跡で凍り付いた歩道を走っていて前輪がスリップし、危うく転倒しそうになったのを背の高いガードレールに助けられたことを覚えています。この正月の三が日がポカポカ陽氣だったのとは一転して、その後は寒さもかなり募り、量はそれ程ではないにしろ、雪の降る日が多い印象があります。
 自転車に乗り始めて身に付いた習慣を4つ挙げます。
  1)何と言ってもその日の天氣。朝の出がけ、テレビ・ラジオの氣象情報で大まかにチェック。
  2)ネットの氣象情報で雨雲の動きと風予測をチェック。特に帰宅時の状態に留意。
  3)週間の天氣予報で心の準備。
と、やはり氣象に関することがメインになります。
 自転車に乗る際、雨・雪はもちろん歓迎しないところですが、それよりも一番の大敵は「向い風」です。最低条件はせめて「無風」。いくらカンカンに晴れていても、まともに向い風に吹かれたら進むどころではありません。風力がかなり強ければ横転してしまう危険もあります。冬季の今は北風、北西の風が吹くので、この方向に向かって進む道はつらいものがあります。
 逆に、強い味方になるのもまた風、「追い風」です。そこで最後に、
  4)帰宅前に必ず「のぼり旗」を確認。
 カーディーラー、パチンコ店、ガソリンスタンド等に立っている旗を、今どの方向にどのくらいの強さで風が吹いているかを建物の中から確認します。走り出してからも、のぼり旗があれば随時確認して行きます。時々、背後霊が押してくれているのではないか、と思うほど加速良好の時がありますが、近くののぼり旗を見てみると、案の定、追い風が味方していたりします。街中は建物や周りの様子で風向きがいろいろと入れ替わるのです。私の自転車はいわゆるシティサイクル、しかも変速機は付いていないので、本当に「追い風」と「下り坂」くらいが数少ない援軍なのです。

 坂道を登りながら、こう考えた。
 坂を登れば腹が立つ。風に向かえば流される。合羽を着るのは窮屈だ。とかく風雨はこぎにくい。

 漱石の『草枕』風に言うとこんなところでしょうか。
 人生も山あり谷あり、晴れやかな日、また心が曇る日、追い風の時もあれば向い風も吹きかかる。いずれにしても自分の足で進んで行くより他にありません。もしかしたら自転車は人生修養の意味も果たしているのでしょう。

「まなびのめ」編集部 佐藤 曜

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