研究者インタビュー

「動物園」は、大人にとっても「学び場」です

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ビジターセンターやセミナーで豊かな学びを

 動物園での飼育や展示を動物福祉という観点から見直し、環境を整えることを「環境エンリッチメント」と言います。現代の動物園が果たすべき役割には、レクリエーション、教育とともに研究と種の保存がありますが、「環境エンリッチメント」は、どの役割にとっても非常に重要です。

 本園は全国の多くの大学や機関と連携して、研究と繁殖に取り組んでいます。野生動物の生息環境は、近代化によって世界中で急速に悪化しました。今も広大な森林が失われ、温暖化が進行中です。多くの生きものたちが絶滅の危機に瀕している今、生息環境の回復とあわせて、生物を保護し、増やし、再び自然へ返す必要があります。そのためには私たち人間が、まず動物の行動や生態を学ぶことから始めなければなりません。

 ホッキョクグマは通常単独で行動し、繁殖の時期だけオスとメスが一緒になります。従って本園でも雌雄を別々に飼育・展示し、タイミングを見計らって会わせています。元々雌雄が常に一緒のサルやライオンはそうしますし、ハーレムを作る必要があるゴリラは、日本中から上野動物園にメスを集めています。

 大きさやにおいなど動物を丸ごと感じ、学ぶ場として動物園を活用していただきたいと思い、本園では様々な取り組みを行っています。2009年に開館した「ビジターセンター」では動物の剥製などを間近で見ることができますし、大学の研究者を講師に招いての「動物セミナー&園内ガイドツアー」を毎月開催しています。本物の動物や骨格標本などを見ながらお話を聞くことで、専門的な内容も分かりやすいと好評です。

 現在、本園の年間来園者数は50万人ほどです。東北での動物園の来園者数は、人口比率で見ても、関西などと比べてずっと低い水準にあります。私自身は動物の研究者でも専門家でもありません。しかし民間のサファリパークなどを除けば本園が南東北では唯一の動物園ということもあり、使命感をもって業務に取り組んでいます。大人にとっても豊かな学びの場である動物園に、より多くの方にお越しいただけるよう願っています。

動物園は海外に開いた窓

 シジュウカラガンを絶滅の淵に追いやったのも、それを保護し、羽数を回復させたのも人間です。私は苦労を重ねた前任者から事業を引き継いだに過ぎませんが、羽数回復事業に携わったことで、あらためて動物と人間の関わりや環境問題について深く考えました。本園では現在、環境問題の啓発活動に力を入れています。園長も述べた通り、動物園は研究、教育機関でもあり、希少になってしまった種の保存に責任を負っています。大学等と連携することで、こうした活動でも成果を上げて行きたいと考えています。

 本園に近い八木山小学校や向山小学校では、子どもたちにゾウやカバの糞から堆肥をつくって野菜を育ててもらい、それをまた動物たちの餌にする、という勉強をしてもらっています。しかし子どもたちだけでなく、大人の方にも日頃から動物たちを身近に感じていただき、自然破壊や乱獲、温暖化などによる、生きものたちの危機と環境問題への関心を高めていただきたいと願っています。

 また、実は動物園は「海外に開いた窓」であるとも言え、そこから外国のようすを見たり知ったりすることもできます。海外の珍しい動物が飼われているだけでなく、共同研究や種の保存事業など、様々な国際交流が行われているのです。

 本園は、アフリカの島国マダガスカルの首都アンタナナリブにある、国立チンバザザ動物園と提携を結んでいます。マダガスカルは環境破壊や政治・経済の問題を抱えていて、人間だけでなく動物たちにも支援が必要です。現在はこちらから専門家を派遣し、飼育技術の指導や小学校での環境教育にあたったり、向こうから研修員を迎えたりしている段階ですが、将来はマダガスカル固有の動物を受け入れるなど、さらに関係を深めたいと考えています。

 市民の皆さん、どうぞ本園を訪れて、やすらぎや癒しを感じていただくとともに、動物たちから環境問題や海外の状況について学んでみてください。心からお待ちしています。

 

(取材=2012年2月16日/仙台市八木山動物公園 管理事務所にて)

研究者プロフィール

仙台市八木山動物公園
園長

遠藤 源一郎 

(えんどう・げんいちろう)1952年宮城県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1978年より仙台市職員。地域振興、市民協働など、主にまちづくり事業に携わってきた。2007年より副園長として八木山動物公園に勤務し、2008年より現職。

仙台市八木山動物公園
飼育展示課普及調整係長/獣医師

釜谷 大輔 

(かまたに・だいすけ)1971年愛媛県生まれ。酪農学園大学酪農学部獣医学科(現・獣医学群獣医学類)卒業。2001年より仙台市職員。2005年より獣医師として八木山動物公園に勤務し、2011年より現職。

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