研究者インタビュー

学び合う市民として─女性・男性にエール!

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女子大学だからこその学びの形

 私は子どもの頃、祖母が数ヶ月ごとにわが家や親戚を巡回して生活するのを「幸せなんだろうか」と思っていました。その疑問が、高齢者や家族、そして女性の問題に関心を持つきっかけになったと思います。また、私には一回り年上の従姉がいて、彼女が研究者として自立する姿が、私にとってのロールモデルであり、良いチューターとなってくれました。

 私が初めて仙台に赴任したのは1988年でした。正直に言えば、関西や東京に比べて女性の活動は遅れているなと思いました。しかし、仙台市や宮城県が女性の施策や男女共同参画社会の実現を掲げて事業を展開するうちに、いくつもの自主的な女性の活動団体が生まれ、育っていきました。私も自治体の審議会で委員をして、行動計画や条例づくりに携わり、そうした動きの促進にささやかな貢献をしてきたつもりです。

 人はそれぞれの状況の中で、最善を尽くすことしかできません。私たちの世代は人数が多く、競争は激しかったと思います。一方で豊かさや、社会の発展を実感することができたため、女性の社会参加についても積極的に考えることができたのかもしれません。

 1999年には男女共同参画社会基本法が施行されました。それは、男女の真の平等や、女性の自己決定権が尊重される社会の実現は、まだこれからということです。たとえば、非正規の労働者は、圧倒的に女性が多いという現実があります。しかし、今後の高齢化が一層進む日本社会において、女性の労働力は絶対に必要ですし、女性の能力が正当に評価・活用され、権利が守られるようにしなければいけません。

 私は女子大学で教える立場にありますが、女性のみという教育環境は、評価されるべき特質の一つだと考えています。社会に出る一歩手前の段階で、女性がおかれている現実を伝えつつ、その中で自己実現するための学びを促すことができるからです。

 女性しかいないということは、女性だけで全てを決め、実行し、責任を負わなければならないということでもあります。高校までのように先生は助けてくれませんし、共学のように男性に譲ってしまうこともありません。たとえ失敗しても、その過程で培われた実践力や交渉・コミュニケーション能力は、きっと卒業後の彼女たちにとって役立つことでしょう。しかも女性教員の割合が多く、身近にロールモデルを見いだしうることも、特質として挙げられると思います。

 私は入学時の学生たちにまず「Girls, be ambitious !」という言葉を贈り、卒業後もずっとエールを送り続けています。もちろん平均寿命まで20年以上ある私自身も、足を止めることなく学び続け、活動し続けたいと思っています。
 

(取材=2013年8月20日/仙台白百合女子大学 5号館4階 人間学部学部長室にて)

研究者プロフィール

仙台白百合女子大学 人間学部 学部長・教授
専攻=家族・ジェンダーの社会学/成人教育論

槇石 多希子  先生

(まきいし・たきこ)1949年神奈川県出身。横浜国立大学教育学部卒業。お茶の水女子大学修士課程修了後、(財)日本青少年研究所、仙台白百合短期大学講師を経て、1996年仙台白百合女子大学創設にともない同大学へ。2005年より教授、2012年より人間学部長(現職)。2005年東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。著書に『ジェンダーと成人教育』(共著)、『変化する社会と家族』(共著)など。

  

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