名著への旅

第33回『まなざしの地獄』

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 「社会学をやっている」と言うと、「社会学って何をするんですか?」と毎回問われる。一言でいえば「できごとを他者や社会との関係から考える学問」だろうか。本書は社会学のお手本とも言い得る名著である。
 本書の対象は1968年から1969年にかけておこった連続ピストル射殺事件の犯人N・Nである。N・Nは当時19歳であった。この少年は、「金の卵」として青森から上京したものの、社会構造や都市での他者からの「まなざし」により絡め取られ、事件を起こすにいたる。その背景を社会学的に分析している。
 見田によれば、人間は諸社会関係の総体であるが、それゆえ社会関係同士が分裂すれば自己も切り裂かれる。地方と都市、過去と現在それぞれの社会関係に翻弄されたN・Nは、その典型である。
 文章自体は平易であるため決して読みにくい書籍ではなく、初学者にもおすすめである。なお初出は『展望』1973年5月号である。

(寺)
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