名著への旅

第30回『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』

  • LINEで送る

 数年前から、憲法記念日(を含む連休中)には日本国憲法を読むことにしている。

 この本は、井上ひさし氏が、憲法の中でも「これだけは読んでおいてほしい」と思う前文と第九条を、小学生にもわかりやすいようにやさしい言葉にしてみたものと、「憲法ってつまりこういうこと」という子ども向けの講演内容を文章化したもの、そして巻末に全条文が収録されている。

 あらためて読めば、「自衛のためなら武力を持っていい」という文章はなく、元々は本氣の「戦わない宣言」だったのでは、と思う。それは相当に勇氣と覚悟のいることだが、先の戦争を反省し、積極的に世界平和を追求すればこその決意であろう。

 それは誰かに押しつけられたというような安っぽいものではなく、「そのころの世界の人たちの希望をすべて集めたもの」で、このやり方はこれからの人類の課題なので、「日本は正しいことを、ほかの国より先に行っている」とも言えそうだ。

 批判派も擁護派もまずは原文をしっかり読むことを。

(前)
  • LINEで送る